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2014 年度 実績報告書

ヒゲクジラの嗅球と嗅覚認識に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24770075
研究機関京都大学

研究代表者

岸田 拓士  京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (40527892)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード鯨類 / 化学感覚 / 進化 / 海洋環境適応
研究実績の概要

本課題では、ヒゲクジラの脳の嗅球に関して、組織学・比較ゲノム学・古生物学など多方面からの研究を行った。免疫組織化学法によってホッキョククジラ(ヒゲクジラ亜目)の嗅球における糸球体の分布を調べたところ、嗅球の背側には糸球が分布しなかった。また、クロミンククジラ(ヒゲクジラ亜目)の全ゲノムを配列決定して解析したところ、彼らは嗅球背側に特異的に発現する遺伝子を持たないことが解明された。これらの結果は、ヒゲクジラの嗅球は、陸上哺乳類のそれと異なり、背側領域を持たないことを示している。
ヒゲクジラは現在の人類の技術によって飼育が不可能であるため、行動実験などによって彼らの嗅覚能力を把握することは難しい。だが、背側領域を除去したマウスは、捕食者や腐敗物のニオイに対する先天的な逃避行動を示さなくなることが報告されている。クジラは海洋性であるために陸上動物の捕食者が存在せず、また鼻孔が口先に存在しないために口に入れようとするものが食べられるのか否かをニオイで判断することができない。このため、捕食者や腐敗物をニオイで判断できないというのは合理的である。
鯨類は、始新世に偶蹄類と分岐して海洋環境へと適応進化を遂げた。始新世の鯨類の化石を調べることで、次の事実が解明された。陸棲傾向の強いパキケトゥスまでは嗅球の背側にも神経の投射が存在した一方で、海棲傾向の強いレミングトノケトゥス以降では嗅球の背側からの神経投射は失われた。つまり、鯨類の嗅覚能力の変化は、海洋環境適応進化に伴うものであることが示唆された。
本研究結果は複数の英文専門誌に論文として掲載され、研究内容は読売新聞や朝日新聞など多くのメディアによって取り上げられた。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Aquatic adaptation and the evolution of smell and taste in whales2015

    • 著者名/発表者名
      Kishida T, Thewissen JGM, Hayakawa T, Imai H, Agata K.
    • 雑誌名

      Zoological Letters

      巻: 1 ページ: 9

    • DOI

      10.1186/s40851-014-0002-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Organization and distribution of glomeruli in the bowhead whale olfactory bulb2015

    • 著者名/発表者名
      Kishida T, Thewissen JGM, Usip S, Suydam RS, George JC.
    • 雑誌名

      PeerJ

      巻: 3 ページ: e897

    • DOI

      10.7717/peerj.897

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Evolution of the sense of smell in cetaceans: do baleen whales use olfaction in foraging?2015

    • 著者名/発表者名
      Kishida T.
    • 学会等名
      Tokai Univ. IIST International Symposium: Baleen Whale Behavior
    • 発表場所
      清水テルサ(静岡県静岡市)
    • 年月日
      2015-02-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 鯨類の嗅覚能力とその進化2014

    • 著者名/発表者名
      岸田拓士
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2014年大会
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-09-04 – 2014-09-07
  • [学会発表] 脳とゲノムから探るヒゲクジラの嗅覚能力の進化2014

    • 著者名/発表者名
      岸田拓士
    • 学会等名
      日本進化学会第16回大阪大会
    • 発表場所
      高槻現代劇場(大阪府高槻市)
    • 年月日
      2014-08-21 – 2014-08-24
  • [備考] 鯨類の化学感覚能力の一端を解明

    • URL

      http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/150304_1.html

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公開日: 2016-06-01  

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