研究課題
陸上植物の世代間の発生プログラムの転換に関わる分子機構を明らかにすることを目的とし、2n世代で1n世代の発生プログラムを抑制する転写因子KNOX2の機能欠損株と野生株とで比較トランスクリプトーム解析を行なった。その過程で、ヒメツリガネゴケ初期胚 (若い2n世代組織)1個分を用いたRNAシークエンスに成功した。比較トランスクリプトーム解析の結果、KNOX2遺伝子機能欠損株では①特定の転写因子、脂肪酸合成酵素、糖輸送体、ペプチド輸送体の発現が変動し、②二次代謝産物合成酵素、細胞壁合成酵素が上昇し、③光合成関連遺伝子、細胞壁分解酵素の発現が低下していることがわかった。KNOX2遺伝子が制御する遺伝子ネットワークおよびグローバルな代謝産物量(メタボローム)の変化が世代交代制御の実働因子であると考えられた。特に転写因子に着目し、その遺伝子機能欠損株、遺伝子過剰発現株を作出し、機能解析を進めることとした。また、転写因子KNOX2自身は核移行シグナルを持たず、別の転写因子であるBELLと複合体を形成することにより核移行し、転写因子として機能する。ヒメツリガネゴケゲノムに存在する4個のBELL遺伝子のうち、3個が胞子体で発現し、KNOX2と複合体を形成し、世代交代制御因子として機能する可能性があることを見いだした。3個のBELL遺伝子に関して詳細な発現解析のためのノックイン株と機能解析のための遺伝子機能欠損株を作出した。これらの解析により、KNOX2とともに世代交代制御に働く因子の全体像が明らかとなる。
受賞、アウトリーチ活動など。榊原恵子、日本進化学会奨励賞受賞(日本進化学会)、2014年8月その他、日本植物学会でシンポジウムを開催、2014年9月
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
PLOS Genetics
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