研究課題/領域番号 |
24770083
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
海老原 淳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (20435738)
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キーワード | シダ植物 / 種形成 / 倍数体 |
研究概要 |
日本で著しい多様化を遂げているシダ植物の複数の群を対象に、従来の形態分類では正確な把握が困難であった種形成ネットワークを総合的に解明するため、DNAマーカー(葉緑体DNA・核DNA)・倍数性情報(染色体数・フローサイトメーター)・胞子観察(稔性・生殖様式)・外部形態を総合的に解析した。前年度から解析を進めている群(オシダ科オシダ属、イノモトソウ科イノモトソウ属ハチジョウシダ類、ヒメシダ科ヒメシダ属ハリガネワラビ類とミゾシダモドキ類)については、各種データを追加することにより、より高い精度で種形成ネットワークの推定を行った。また、対象分類群をさらに拡大し、新たにヒメシダ科ヒメシダ属ニッコウシダ類・同コウモリシダ類・同ゲジゲジシダ類、コバノイシカグマ科フジシダ属、チャセンシダ科チャセンシダ属コバノヒノキシダ類などを新たな解析対象とした。 いずれの群においても、従来の形態分類では全く想定されていなかった複雑な「種」の実態が明らかになった。特に無配生殖種が日本産の大半を占める群(例えばイノモトソウ属ハチジョウシダ類)では、日本で認められている「種」のほとんどが確かに遺伝的に異なる起源を持つことが解明されたが、その親となった種のほとんどは現在の日本には分布しないものであることが確実となった。一方、無配生殖は行わないと考えられている群のうち、ヒメシダ科コウモリシダ類、コバノイシカグマ科フジシダ属などでは、従来独立種と考えられていたものが、実は不稔性雑種である事例が見つかった。これらでは親を欠きながら不稔性雑種が日本国内に広がるという奇妙な状況が生じており、その起源と繁殖様式については今後詳細に研究する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料入手の問題などで当初予定していた属の一部が未解析であるが、新たに解析対象に加えた属もあり、全体として順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究材料入手にあたって、研究代表者による活動のみでは期間内で必要なもの全てを収集しきれない(特に胞子塾期の材料が必要な場合など)ため、研究協力者(地方在住の愛好家などを含む)に協力を仰ぎながら進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費の繰り越しは、研究協力者から受け取りを予定していたオシダ科イワヘゴ類の材料が、先方の学内業務多忙のため予定通りに到着しなかったことによるもので、その分のDNA解析用試薬代を繰り越すこととなった。 人件費・謝金の繰り越しは、上記サンプルの解析補助のための謝金を使用しなかったことの他、種分化ネットワーク解明後の分類学的再編を本年度に行うことになったことに伴って、関係する証拠標本の整理作業も本年度に行う予定に変更したことによるものである。 オシダ科イワヘゴ類については、次年度の早期に先方を自ら訪問して採集する予定にしており、DNA解析用試薬類及び解析補助のための謝金は本年度上半期には執行予定である。関係する証拠標本の整理作業は本研究課題の総括のために用いられため、次年度下半期に謝金として執行予定である。
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