ポリネーターシフトは顕花植物の生態的種分化にとって重要と考えられているが、どのような環境下でどのように進行するのかは不明確である。本研究で用いたママコナ属は長舌ハナバチ類が主要なポリネーターだが、紀伊半島南部に分布するオオママコナは、顕著に長い花筒を持ち、昼行性スズメガがポリネーターとなることが明らかになった。また、花筒が短いヤクシマママコナは屋久島高地に分布が限られ、主にハナアブ類による訪花が確認された。両分類群ともシコクママコナに近縁だが、生育地では開花期に長舌のハナバチ類がほとんど確認されず、適した訪花者が少ない環境下で、本来は盗蜜・盗粉者だった昆虫に適応進化したものと考えられる。
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