研究課題
細菌に保存された蛋白質FtsAやZipAは、細胞分裂開始時に自己重合したFtsZからなる原繊維と結合することで、原繊維を細胞分裂点の細胞膜へ固定化する。また、細胞分裂の進行に伴って、原線維は細胞分裂関連蛋白質に対する相互作用の足場となる。最終的に、直線型原線維は曲線型原繊維への変化や脱重合を引き起こし、細胞分裂が進行する。そのため、原繊維構造変化はFtsAやZipAとの相互作用とその後の機能発現に重要と考えられる。しかし、原繊維構造変化や原繊維の細胞膜への固定化についての分子レベルでの機構は不明である。そこで、本研究ではまず、この足場蛋白質であるFtsZの原繊維構造遷移機構の解明に取り組んだ。その結果、新たなFtsZプロトマーの立体構造を発見し、また、既知プロトマー構造との構造遷移はGTPと触媒残基をもつT7 loopとの相互作用によって誘発されることが示唆された。さらに、各構造状態を容易に遷移可能な変異体の立体構造解析にも成功し、分子内構造変化がpolymerである原繊維の構造変化を引き起こすこと、また、直線型原繊維構造は新規プロトマー構造によって形成される事を提唱した。次に、FtsZからなる原繊維に最初に相互作用するFtsAの構造解析とFtsZ-FtsA複合体構造の解析を進めた。黄色ブドウ球菌FtsAの結晶構造解析に成功し、本構造中には精製・結晶化には加えていないATPおよびMgイオンの結合が確認され、ATPase活性を持つ可能性が示唆された。そこで、ATPase活性を確認した結果、枯草菌FtsAでのみFtsA単独で活性が顕著に確認された。最終年度ではFtsA単独では活性を示さない黄色ブドウ球菌FtsAがFtsZとの複合体化では活性を発現するという仮説のもと、FtsZや変異体に核酸を加え活性を評価したが、黄色ブドウ球菌FtsAは、FtsZやFtsZ単量体化変異体と相互作用を示すが、ATPase活性は観測されなかった。
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http://www.hokudai.ac.jp/news/2014/03/ftsz-gtp-t7-ftsz-pdf.html