研究課題/領域番号 |
24770091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 膜輸送体 / プロトンポンプ / 高等植物 / 結晶化 / X線結晶解析 |
研究概要 |
プロトン輸送性ピロホスファターゼ(H+-PPase)は膜蛋白質であり、ピロ燐酸(PPi)を分解し、H+の能動輸送を行なうイオンポンプである。植物に広く分布し、真正細菌や古細菌の一部、マラリア原虫等の寄生性原生動物に存在する。高等植物では主に液胞膜に局在し、液胞型ATPaseと共に液胞内腔を酸性化し、液胞膜の二次輸送体にH+駆動力を供給する。そのため、H+-PPaseは液胞における物質の輸送と蓄積機能を支える重要な一次能動輸送体と言える。加えて、細胞代謝の副産物として生じる細胞質PPiの分解においても主要な役割を果たすことが最近になり明らかにされている。H+-PPaseの分子構造は分子量約8万の単一ポリペプチドがホモ2量体を形成し、単量体は16本の膜貫通ヘリックスを含む。本研究はX線結晶解析によるH+-PPaseの原子構造の解明と、それに基づく作動機構の理解を目指している。これまでに、高等植物由来のH+-PPaseについて、数種の基質アナログ結合状態の構造決定に成功している。また、基質非結合状態について、抗体断片との複合体として4.1Å分解能の構造を、H+-PPase単体としては3.5Åの回折点を示す結晶を得ている。 平成24年度は主に、前者の複合体について、結晶化条件とクライオ条件の検討を行なった。その結果、分解能は3.5Åまで改善された。しかしながら、目標とする水が見える程度の分解能に達するまでには至っていない。今後も引き続き検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに実験計画を遂行しており、Fabとの複合体については目標とする分解能に到達するには至っていないものの、分解能は着実に改善されている。平成25年度からは、高等植物以外のH+-PPaseあるいは同族のNa+-PPaseを研究対象とするため、発現系を構築する計画である。平成25年度に行なう予定の実験に向けての準備も順当に行なわれており、いくつかの候補を選び、遺伝子の合成を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究方針は適切であり、実験計画は順調に遂行されている。このまま推進すれば良いと考えられる。異なる生理状態における構造が決定されることにより、その比較からH+-PPaseの作動機構の理解が可能になるであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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