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2012 年度 実施状況報告書

オートファジーにおけるAtg12-Atg5結合体の作用機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24770092
研究機関東京工業大学

研究代表者

中戸川 万智子  東京工業大学, フロンティア研究機構, 先進研究員 (90402461)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードオートファジー / ユビキチン様タンパク質 / E2酵素 / E3酵素 / 結晶構造解析
研究概要

オートファジーは細胞内の主要な分解システムの一つである。オートファジーでは、細胞質に被分解物を包み込んだ二重膜構造体オートファゴソームが形成され、これが液胞またはリソソームと融合することで中身が分解される。オートファゴソームの形成には2つのユビキチン様タンパク質Atg8とAtg12が必須である。これらはユビキチンと同様の結合反応を経て、Atg8は脂質分子ホスファチジルエタノールアミンと、Atg12はAtg5と結合する。Atg12-Atg5結合体はAtg8結合反応のE3酵素として機能する。しかしながら、その立体構造は典型的なE3酵素とは全く異なっており、Atg12-Atg5がどのようにしてE3酵素として機能するのか全く予想出来なかった。
私は、分子内ジスルフィド結合の形成を指標にして、Atg8結合反応のE2酵素Atg3の活性中心のCysと他のアミノ酸残基間の近接度を調べる方法を確立した。Atg12-Atg5存在下および非存在下で調べた結果、Atg12-Atg5が相互作用することによって、Atg3の活性中心のCysの側鎖の向きが活性に重要な他の残基の方へ変化することを示した。さらに、変異解析とシロイヌナズナAtg3の構造との比較により、Atg12-Atg5非存在下においてAtg3の活性がどのように抑制されているのか、その構造的基盤を明らかにした。
本研究により、E3酵素であるAtg12-Atg5がE2酵素Atg3に構造変化を引き起こし、その活性を上昇させることを示した。E3酵素がE2酵素に構造変化を引き起こすことを示した初めての例である。本研究は2013年4月1日発行のNature Structural & Molecular Biologyに掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究では、Atg12-Atg5がAtg3に構造変化を引き起こし、Atg3が活性化することを生化学的な解析によって示した。しかしながら、Atg12-Atg5がAtg3とどのように相互作用しているのかは明らかでない。また、Atg12がユビキチン様タンパク質であるのに加え、Atg5にもユビキチン様フォールド(Ubl)が二つ存在する。これら三つのUblがAtg3の構造変化においてどのように関与するのかを含め、Atg12-Atg5がどのようにしてAtg3に構造変化を引き起こすのかを明らかにするには、Atg12-Atg5とAtg3の複合体の構造解析が必須である。現在、Atg12-Atg5とAtg3をそれぞれ高い精製度で精製することに成功し、Atg12-Atg5とAtg3の複合体の結晶化スクリーニングを行った。いくつかの条件で微結晶が得られた。

今後の研究の推進方策

Atg12-Atg5とAtg3の複合体の結晶化スクリーニングの結果をもとに、条件を設定し直し、より良い結晶化条件を探索する。X線解析に耐え得る結晶が得られたら、X線回折データの収集、位相の決定を行う。適当な結晶が得られなかった場合は、生物種を変える、Atg12-Atg5とAtg3を化学架橋剤で固定化して結晶化を試みる。
得られた結晶構造の情報をもとに、Atg12-Atg5とAtg3の相互作用部位やAtg3の構造変化に重要な残基などについて、生化学的に検証する。複合体の立体構造から、Atg12-Atg5とAtg3の相互作用に関わると予想されるアミノ酸残基に変異を導入し、Atg12-Atg5とAtg3の相互作用にどう影響するかを蛍光相関分光法や等温滴定カロリメータにより調べる。また、Atg3の構造変化を阻害するような変異を導入し、構造変化における残基の重要性について、複合体の立体構造と照らし合わせて検証する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Atg12-Atg5 conjugate enhances E2 activity of Atg3 by rearranging its catalytic site2013

    • 著者名/発表者名
      Machiko Sakoh-Nakatogawa, Kazuaki Matoba, Eri Asai, Hiromi Kirisako, Junko Ishii, Nobuo N Noda, Fuyuhiko Inagaki, Hitoshi Nakatogawa, Yoshinori Ohsumi
    • 雑誌名

      Nature Structural & Molecular Biology

      巻: 20 ページ: 433-439

    • DOI

      10.1038/nsmb.2527.

    • 査読あり
  • [学会発表] オートファジーに関わる2つのユビキチン様タンパク質結合系のクロストーク2012

    • 著者名/発表者名
      中戸川万智子
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20121211-20121214
    • 招待講演
  • [学会発表] The E3 enzyme Atg12-Atg5 rearranges the catalytic center of Atg3 to enhace its E2 activity2012

    • 著者名/発表者名
      Machiko Sakoh-Nakatogawa, Hitoshi Nakatogawa, Yoshinori Ohsumi
    • 学会等名
      The 6th international symposium on autophagy 2012
    • 発表場所
      万国津梁館(沖縄県)
    • 年月日
      20121028-20121101
  • [学会発表] オートファジーに必須のE3酵素Atg12‐Atg5によるE2酵素Atg3の活性化機構2012

    • 著者名/発表者名
      中戸川万智子・中戸川 仁・大隅良典
    • 学会等名
      日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(愛知県)
    • 年月日
      20120620-20120622
  • [備考] ユビキチン様タンパク質Atg12-Atg5結合体

    • URL

      http://first.lifesciencedb.jp/archives/6807

  • [備考] オートファジーに必須な因子の作用機構を分子レベルで解明

    • URL

      http://www.titech.ac.jp/file/pr20130422_osumi.pdf

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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