研究課題/領域番号 |
24770093
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20502397)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチジルtRNA / 翻訳 / リボソーム / ストール / X線結晶構造解析 / 酵素基質複合体 |
研究概要 |
tRNA再生酵素は、タンパク質生合成が異常終了した際に産出されるペプチジルtRNAをペプチドとtRNAに分離し、tRNAを再びタンパク質生合成の材料として利用可能な状態にする必須タンパク質である。本研究では、tRNA再生酵素-基質(ペプチジルtRNA)の相互作用様式を、X線結晶構造解析により原子分解能レベルで解析する。そして、生体内に多種類存在するtRNAの再生が、1種類のtRNA再生酵素により行われる仕組みを明らかにすることを目的とした。またtRNA再生酵素は、タンパク質生合成の材料となるアミノアシルtRNAを誤って認識することはしないが、本研究ではその特異性の仕組みも明らかにすることを目的とした。 本年度は、tRNA再生酵素・tRNA CCA-acceptor-TpsiC domain複合体の立体構造解析を終了することができた。そして、酵素学的機能解析と併せて、tRNA再生酵素のtRNA認識に関与するアミノ酸残基を特定した。また我々は、tRNA再生酵素はtRNAのリン酸バックボーンとリボースのみを認識し、塩基とは相互作用していないことを明らかにした。そしてその基質認識様式が、塩基配列が様々である基質のtRNA部位を、配列非依存的に酵素が認識できるメカニズムであることを示した。さらに我々は、今回立体構造が得られたことで、基質であるペプチジルtRNAとtRNA再生酵素との複合体モデルを構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基質の一部位であるtRNAは柔軟性に富む分子であるため、結晶化が非常に困難であることが予測された。その証拠として、tRNA再生酵素はヒトや大腸菌をはじめとし、現在までに12種類の種由来の立体構造が報告さているが、それらは全て酵素単独の構造である。しかしながら、我々は様々な検討の結果、tRNAはCCA-acceptor-TpsiC domainのみでは構造が安定なこと、さらに、その部分のみでも酵素活性発現に十分であることを見出した。そして今年度、tRNA再生酵素・tRNA CCA-acceptor-TpsiC domain複合体の立体構造解析に成功した。これは、最終目的であるtRNA再生酵素・基質(ペプチジルtRNA)複合体の構造解析への大きなステップである。それ故、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は平成24年度、基質のtRNA部位と酵素の相互作用様式を明らかにしたので、今後は特に、基質のペプチド部位と酵素の活性部位との相互作用に焦点を絞っていく。すなわち、今後は引き続きtRNA再生酵素・基質(ペプチジルtRNA)複合体の結晶構造解析へ向けて、N-アセチルアミノアシルtRNAフラグメントの調製をする。それと同時に、インヒビターである小分子化合物との共結晶化にも取り組む。立体構造解析が終了したら、基質の多様なペプチド配列を配列非依存的にtRNA再生酵素がどの様に認識するのか、その基質認識多様性のメカニズムを考察する。さらに、tRNA酵素はどの様にアミノアシルtRNAとペプチジルtRNAを識別しているのか、その仕組みを考察する。考察内容は、酵素活性測定により検証する。具体的には、tRNA再生酵素に部位特異的変異を導入し、放射性同位体アミノ酸を導入した基質を使用して活性測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、N-アセチルアミノアシルtRNAフラグメントの調製、および結晶化を行う際に、試薬類に100万円、ガラス・プラスチック器具類に50万円が必要となる。活性測定の際は放射性同位体であるアミノ酸が必要になるが、これを購入するのに30万円が必要となる。回折強度データの収集は高エネルギー加速器研究機構(筑波)で行うが、このための旅費として18万円が必要となる(3万円 x 2人分 x 3回 = 18万円)。研究成果を学会で発表するための旅費として10万円が必要となる(第36回日本分子生物学会年会、神戸、3泊4日)。成果を国際学術誌で発表する際の英文校閲費用として22万円が必要となる。
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