研究課題/領域番号 |
24770093
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20502397)
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キーワード | ペプチジルtRNA / 翻訳 / リボソーム / ストール / X線結晶構造解析 / 酵素基質複合体 |
研究概要 |
tRNA再生酵素は、タンパク質生合成が異常終了した際に産出されるペプチジルtRNAをペプチドとtRNAに分離し、tRNAを再びタンパク質生合成の材料として利用可能な状態にする必須タンパク質である。本研究では、tRNA再生酵素-基質(ペプチジルtRNA)の相互作用様式を、X線結晶構造解析により原子分解能レベルで解析する。そして、生体内に多種類存在するtRNAの再生が、1種類のtRNA再生酵素により行われる仕組みを明らかにすることを目的とした。またtRNA再生酵素は、タンパク質生合成の材料となるアミノアシルtRNAを誤って認識することはしないが、本研究ではその特異性の仕組みも明らかにすることを目的とした。 本年度は、tRNA再生酵素と、tRNAのCCA末端を模倣する低分子基質アナログ複合体の立体構造解析を終了することができた。この立体構造から、基質と相互作用するtRNA再生酵素のアミノ酸残基が明らかになった。さらに我々は、それらアミノ酸残基の酵素活性発現時における役割を調べるため、部位特異的変異体を作製して酵素活性測定を行うこととした。現在までに、部位特異的変異体の作製を終了させ、半定量的な活性測定まで終了している。その結果、立体構造より明らかになった基質アナログと相互作用しているtRNA再生酵素のアミノ酸残基は全て、活性発現に寄与しているものであることがわかった。今後は、反応速度論的パラメータを算出していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基質の一部位であるtRNAは柔軟性に富む分子であるため、結晶化が非常に困難であることが予測された。その証拠として、tRNA再生酵素はヒトや大腸菌をはじめとし、現在までに10種類以上の種由来の立体構造が報告さているが、それらは全て酵素単独の構造である。しかしながら我々は、tRNAを構造が安定な単位に分割し、CCA末端を模倣する低分子基質アナログ複合体と酵素との複合体の構造解析に成功した。これは、最終目的であるtRNA再生酵素・基質(ペプチジルtRNA)複合体の構造解析への大きなステップである。また、今回見つかった基質アナログと相互作用しているアミノ酸残基は、全て活性発現に寄与しているものであることを、我々は部位特異的変異体を使用した酵素活性測定により明らかにした。それ故、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は今年度、基質のtRNA部位のCCA末端と酵素の相互作用様式を明らかにした。また昨年度は、基質のtRNA部位のacceptor stemとTPsiC armと酵素の相互作用様式を明らかにしている。よって、今後は、基質のペプチド部位と酵素の活性部位との相互作用に焦点を絞っていく。それを調べるための基質アナログの合成を我々は既に終了させている。今後はこの化合物とtRNA再生酵素との複合体の結晶化に取り組んでいく。立体構造解析が終了したら、tRNA酵素はどの様にアミノアシルtRNAとペプチジルtRNAを識別しているのか、その仕組みを考察する。なお、構造解析が旨く行かない場合は、ドッキングシミュレーションにより相互作用様式を予測・考察する。考察内容は、酵素活性測定により検証する。具体的には、tRNA再生酵素に部位特異的変異を導入し、放射性同位体アミノ酸を導入した基質を使用して活性測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
tRNA再生酵素と、tRNAのCCA末端を模倣する低分子基質アナログとの複合体の結晶化が、思いの外少ない条件検討で達成できた。そのため、結晶化条件検討のための試薬類をはじめとする消耗品費の出費が大幅に抑えられた。また、得られた結晶は良質な結晶であり、放射光施設での測定も少ない回数で済んだため、旅費も削減された。それらのことが、次年度使用額が生じた原因である。 平成27年度は、N-アセチルアミノアシルtRNAフラグメントの調製し、それとtRNA再生酵素との共結晶化を行う。また、tRNAのCCA末端とペプチドを模倣した低分子化合物とtRNA再生酵素との共結晶化も行う。これらを実行するために、試薬類に150万円、ガラス・プラスチック器具類に50万円が必要となる。活性測定の際は放射性同位体であるアミノ酸が必要になるが、これを購入するのに45万円を予定している。回折強度データの収集は高エネルギー加速器研究機構(筑波)で行うが、このための旅費として18万円が必要となる(3万円 x 2人分 x 3回 = 18万円)。研究成果を学会で発表するための旅費として20万円が必要となる(第16回日本RNA学会年会、名古屋、3泊4日;第37回日本分子生物学会年会、横浜、3泊4日)。成果を国際学術誌で発表する際の英文校閲費用として22万円が必要となる。
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