研究課題/領域番号 |
24770095
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小笠原 諭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30546685)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ペプチドトランスポーター / モノクローナル抗体 / 構造解析 / 膜タンパク質 |
研究概要 |
ヒトペプチドトランスポーター(以下PEPT)は推定12回膜貫通の膜蛋白質である。そのうち小腸吸収上皮細胞の刷子縁膜に発現するオリゴペプチドトランスポーターPEPT1は、ジ/トリペプチドのみならず、多様な化合物をも輸送することが明らかにされ、さらに腫瘍細胞において、高発現していることから、PEPTに対して高親和性のペプチド系抗がん剤を合成することで、効果的に腫瘍細胞に取り込まれ、薬効を発揮することが期待される。このPEPTに対して基質が結合した状態で構造解析を行うことは、効率的な創薬のために非常に重要であることから、バクテリアのホモログであるPepTSoについて、基質の結合した状態で構造解析を行うことを目的としている。 24年度においてVapor diffusion法、Lipidic cubic phase法による結晶化においてさらなる分解能向上を目指した。前者の方法では結晶創成後の結晶の脱水処理の検討を行った結果、分解能の改善傾向が確認できた。後者の方法ではモノオレインによるキュービック層にPepTSoを入れた結晶化スクリーニングから微結晶が観察することができた。しかし、この結晶をX線回折実験するために回収できる大きさに結晶の成長ができる条件がまだ最適化されていない。また、条件によっては回収の際、外気と触れることで結晶が再溶解してしまうなど、結晶化条件に課題が残った。 PepTSoの結晶構造解析と平行して、さらに別のPEPTホモログの構造解析をすることで、ペプチドトランスポーターの普遍的な基質輸送機構の知見が得られると考えた。共同研究者のNewstead博士が新たにバクテリアホモログ1種、植物由来のホモログ2種について発現・精製に成功した。現在、これらのモノクローナル抗体作製を行っており、PEPTホモログと結合でいる抗体が各種から数クローンずつ得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構造解析においては、Vapor diffusion法、Lipidic cubic phase法によってPepTSo-抗体複合体の共結晶は得られているが、前者では3A以上の分解能でのdatasetが得られていない。また、後者においては結晶創成のステップで結晶の大きさ、結晶化条件など、X線回折実験するために解決しなければならない課題が残っている。 一方で、新たにPEPTホモログであるバクテリアホモログ1種、植物由来のホモログ2種についてモノクローナル抗体作製を行い、各ホモログについて数クローンずつ、抗体複合体の形成できるものが得られた。今後はこれらについても平行して共結晶化を行い、共結晶が創成されればX線回折実験を行って比較検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
25年度ではVapor diffusion法、Lipidic cubic phase法による結晶化においてさらなる分解能向上を目指した。前者の方法では結晶創成後の結晶の脱水処理が、分解能の改善に効果的であったことから、この方法についてさらに検討を行っていく。後者の方法では結晶化スクリーニングから微結晶が確認でき、高い再現性であるが。この結晶をX線回折実験するために回収できる大きさに結晶の成長ができる条件がまだ最適化されていない。また、結晶化条件によっては回収の際、外気と触れることで結晶が再溶解してしまうなど、結晶化条件に課題が残った。そのため結晶化条件のさらなる最適化が必要である。 25年度ではPEPTホモログであるバクテリアホモログ1種、植物由来のホモログ2種について新たに樹立したモノクローナル抗体を用い、各ホモログについても平行して共結晶化を行う。X線回折実験にて3-4Aの分解能であっても、複数のホモログについてdatasetを得ることを目標とする。ペプチドトランスポーターの基質輸送には複数の構造状態が予想されていることから、各ホモログ、あるいは樹立した各クローンによって、構造状態が異なる可能性が考えられる。このようにして、ペプチドトランスポーターホモログの新規構造、あるいは抗体による新規の構造状態を「重ねあわせる」ことで輸送機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
結晶化条件を最適化するための実験を最優先とするため、作製したモノクローナル抗体の大量生産、精製のステップを外部受託に依頼する費用に充てる。また、外部受託できない抗体の調製ステップについても市販のキットなどを購入して使用することで操作を簡略化する。
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