研究課題/領域番号 |
24770097
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東浦 彰史 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (90598129)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | X線結晶解析 |
研究概要 |
分子量が10億にも及ぶクロレラウイルスのX線回折を生じるほどに質のよい結晶の作製を目指し、クロレラウイルスの大量調製法の確立を優先的に行った。その結果、クロレラ溶液3Lの培養から数mgオーダーのクロレラウイルスを恒常的に得られる条件を確定することができた。さらに、精製条件の最適化を行い、結晶化に適した高純度なクロレラウイルスの大量調製法を確立することができた。純度は動的光散乱法により得られたクロレラウイルス溶液のサイズ分散が単分散であることの確認と、クライオ電子顕微鏡による観察で行った。電子顕微鏡を用いた観察により、高純度な試料であることは確認できたが一部表面構造にファイバー状の不均一な構造が認められた。 結晶化を目指し、自動結晶化ロボットを用いた網羅的な結晶化条件の探索を行ったが結晶化を示唆する結果は得られなかった。そこで、他ウイルスの結晶化条件の文献調査を行いウイルスの結晶化に適した条件を絞り込んだ。他のウイルスの結晶化に用いられているアルコール系の条件ではクロレラウイルスのカプシド蛋白質が遊離し結晶になったことから不適であると判断した。一般的な蛋白質の結晶化にはほとんど用いられることはないが、ウイルスの結晶化には適用例のある低濃度のポリエチレングリコールを用いた結晶化条件で微結晶を得ることに成功した。得られた微結晶を電子顕微鏡により観察したところ、クロレラウイルスが結晶状に整列していることを確認することができたが、X線回折を得るにはそのサイズが数十マイクロメートルと不十分であった。結晶のサイズが不十分である理由として、クロレラウイルス粒子表面に見られた不均一な構造が結晶成長を妨げていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究実施計画においてはクロレラウイルスを結晶化に適した量と質で調製する方法の確立という点においては、おおむね順調に研究は進んでいる。 結晶化条件の探索により微結晶を得ることはできたが、そのサイズと質が不十分でありX線回折実験を実施することができなかった。 これらの点からやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
クロレラウイルスの表面構造の不均一性を示唆する様な結果が得られたことと、既に報告のあるカプシド蛋白質の糖鎖の存在が結晶成長を妨げていると考えている。そこで、ウイルス表面を各種糖分解酵素により処理し、表面構造の均一化を目指す。糖分解酵素による糖鎖の分解の可否は対象がクロレラウイルス中で最も含有量の多いカプシド蛋白質であるため、SDS-PAGEにより容易に評価することが可能である。 結晶化条件の最適化で多くの条件検討を行うためには数10ミリグラムオーダーのクロレラウイルスが必要になる、さらにX線回折実験に適した結晶が得られた後の回折強度データ収集には非常に多くの結晶が必要であることが予想されるため、前年度に引き続きクロレラウイルス大量調製法の最適化を適宜行っていく。 クロレラウイルスが結晶と成った場合その最小の繰り返し単位は最低でも2000オングストロームとなり、これほどまでに大きな繰り返し単位からなるX線回折は前例がない。そのため、データ収集法の改良が必要となる。特に位相決定に必要である低分解能のデータ収集法を大型放射光施設SPring-8の蛋白質研究所生体超分子構造解析ビームラインにおいて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロレラウイルスの大量調製時に用いる培養溶液、緩衝溶液、結晶化溶液調製のための試薬類と培養のためのガラス器具、フィルター等の消耗品の購入に用いる。また、ここまでの成果を学会等で発表するための旅費とコンピュータ類の購入に当てる予定である。
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