研究課題/領域番号 |
24770098
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 純矢 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00533788)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | SH3ドメイン / エンドサイトーシス / Multivesicular body / EGF |
研究概要 |
本研究の目的は、新規の脂質結合ドメイン(SYLFドメイン)を有するSH3YL1のエンドサイトーシス経路への関与ならびにin vitroで観察されたリポソームを小さくするSYLFドメインのvesiculation活性の生理的意義を見出すことである。当該年度に実施した研究は、主にエンドサイトーシスにおける機能解析であり、その具体的内容を下に記す。 SH3YL1-GFPの細胞内局在を観察したところ、初期エンドソーム近傍でドット状の局在が認められたが、エンドソーム及び他のオルガネラマーカーと完全に一致しなかった。また、SH3YL1ノックダウンにおいて、蛍光標識されたEGFの取り込みを観察すると、初期エンドソームから後期エンドソームの輸送が障害されていることが明らかとなった。EGF刺激によるEGF受容体の分解アッセイでも同様に、SH3YL1ノックダウンでその分解が抑制されていた。さらに、Multivesicular body(MVB)形成を模倣する系(Rab5 Q79Lの過剰発現)において、SH3YL1がMVB形成に関わっているか検討した。その結果、SH3YL1ノックダウンでは、コントロールに比べMVB形成が著しく抑制しており、すなわちSH3YL1はMVB形成過程に重要な役割を担っていることが示唆された。 以上の結果から、SH3YL1は初期エンドソーム近傍に局在し、MVB形成に関与することでEGF等のエンドサイトーシスを制御していることが明らかとなった。上記の結果は現在投稿準備中である。脂質結合ドメインを有しMVB形成に関わる分子はほとんど知られておらず、本研究によってMVB形成メカニズムの理解がより進むことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SH3YL1のエンドサイトーシス経路への関与は概ね明らかにできたものの、in vitroで観察されたvesiculation活性の生理的意義及びエンドサイトーシスへの関与はまだ明らかとしていない。本年度でそれらを解明していく。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroで観察されたvesiculation活性について研究を遂行していく。SYLFドメインのうち、どの領域・アミノ酸がその活性に必須か検討し、種で保存されているかも合わせて検討する。さらに、昨年度見出したMVB形成にその活性が関与しているか、レスキュー実験などにより明らかにしていく。また、エンドサイトーシス経路以外でその活性が機能している可能性も考慮し、エキソサイトーシス・オートファジーなどの別の膜輸送との関連性も検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
SH3YL1がMultivesicular body形成に関与することを明らかにできたため、それを投稿論文としてまとめ、できるだけはやく投稿する。よって、次年度にはまず論文に掲載するための実験にかかる試薬・消耗品代、英文校正、論文投稿料・掲載料などに充てられると思われる。さらに、SH3YL1のvesiculation活性の生理的意義や詳細なメカニズム解明も重要な課題であるので、その実験にかかる試薬・消耗品代に多くを使用することが予想される。実験の都合上、必要な機器を購入する可能性もあり、適宜対応していく。また、国内外の学会にも参加する予定であるので、旅費も計上する。
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