• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

In‐Cell NMR法の一般化に向けたデータ解析アルゴリズムと信号処理法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24770101
研究機関首都大学東京

研究代表者

池谷 鉄兵  首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30457840)

キーワードIn-cell NMR / 蛋白質立体構造計算
研究概要

本年度は,昨年度より開発を進めてきたベイズ推定を利用したNMR立体構造計算手法をさらに改良し,NOE解析と構造計算を再帰的に実行可能なプログラムの開発に成功した.これにより,本最適化計算により修正された構造に基づいて,NOE帰属も同時に修正することが可能となった.
加えて,本手法の有用性を検証するために,立体構造とNMR緩和データからNOESYスペクトルを逆計算するシミュレーションアルゴリズムを開発した.このシミュレーションにより,実験データに含まれるような曖昧さを完全に排除したスペクトルを立体構造から作成できるようになったため,シミュレーションデータを利用した本構造最適化手法のより厳密な性能評価も可能となった.
実際に,GB1蛋白質の構造を元に13C/15N-NOESYスペクトルをシミュレーションし,ここで得られたグナルのうち,95%を消失させたデータを作成し,従来法と本手法の両方に適用させて,手法の評価を行った.ここから,従来法では正解構造からのRMSD値が4.3Åと収束した構造が得られなかったが,本手法では2.4Åと大幅な改善が確認できた.
また,実際の実験データに対する適用可能性も検証するため,in-cell NMR法により測定された生細胞内のGB1蛋白質のスペクトルデータに対して本手法を適応した.解析の結果,従来法では,in-vitroの構造とのRMSD値が1.8Åであったのに対し,ベイズ推定を利用した本手法では,0.7Åと大幅な改善が確認できた.
以上により,ベイズ推定を利用した新規立体構造計算手法は,シミュレーションされたスペクトルに対しても,実際の実験データ対しても,従来法と比較して非常に高精度の解析が可能であることを示すことができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新規蛋白質立体構造計算手法の開発では,ベイズ推定を用いた計算手法を複数のデータに適用して検証を行ったが,いずれのデータに対しても来従法に比べて構造計算の精度を大幅に改良できており,期待通りの性能を発揮している.一方で,本手法を一般ユーザが使用可能な形に整備する作業は,まだ不十分であり,次年度にはプログラムの一般公開に向けた作業を進める必要がある.また,専門誌への研究成果の発表も合わせて進める.
新規信号処理法の開発では,圧縮センシングを用いたプログラムは完成したが,従来の最大エントロピー法を用いた手法と比べ,明確な改善がみられておらず,問題の検証が必要である.

今後の研究の推進方策

ベイズ推定を用いた新規立体構造計算手法は,期待通り,ほとんどのデータで,従来法と比べて十分に高精度の構造決定が可能となっており,手法開発の第一段階としては一定の成果が得られた.今後は,この研究成果を専門誌に発表することと,本プログラムを一般ユーザが簡易的に使用可能な形にするために,プログラムの高速化,堅牢性の向上,インタフェースの修正,マニュアル整備等を進めていく.また,現在はNOESYスペクトルデータにのみ本手法が適応可能であるが,さらに化学シフト,Paramagnetic Relaxation Enhancement (PRE)やPseudo Contact Shift (PCS)などのデータにも同様な計算が可能な形に拡張していくことを目標にする.
信号処理法の開発では,プログラムの修正を進め,シミュレーションデータ,および実際のin-cell NMRデータに適用し,プログラムの有効性をより詳細に検証する.

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] An in-cell NMR study of monitoring stress-induced increase of cytosolic Ca2+ concentration in HeLa cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Hembram D.S., Haremaki T., Hamatsu J., Inoue J., Kamoshida H., Ikeya T., Mishima M., Mikawa T., Hayashi N., Shirakawa M. and Ito Y.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 438 ページ: 653-659

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2013.07.127. Epub 2013 Aug 8.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] NMR solution structure of a Chymotrypsin inhibitor from the Taiwan cobra Naja naja atra.2013

    • 著者名/発表者名
      Lin Y.J., Ikeya T., Guentert P. and Chang L.S.
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 18 ページ: 8906-8918

    • DOI

      10.3390/molecules18088906.

    • 査読あり
  • [学会発表] 解析法: CYANAを用いた新しい高次構造計算2014

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵
    • 学会等名
      In-cell NMR 講習会
    • 発表場所
      理化学研究所横浜研究所
    • 年月日
      20140318-20140319
    • 招待講演
  • [学会発表] In-cell NMR法を用いた生きた細胞内での天然変性蛋白質の立体構造とダイナミクス2014

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵
    • 学会等名
      天然変性タンパク質の分子認識機構と機能発現 第3回公開シンポジウム
    • 発表場所
      九州大学医学部百年講堂
    • 年月日
      20140227-20140228
    • 招待講演
  • [学会発表] 生きた細胞中での蛋白質立体構造決定とダイナミクス解析2014

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵
    • 学会等名
      第346回 CBI学会研究講演会
    • 発表場所
      東京大学山上会館
    • 年月日
      20140213-20140213
    • 招待講演
  • [学会発表] A NMR protein structure determination algorithm based on Bayesian inference2014

    • 著者名/発表者名
      Teppei Ikeya
    • 学会等名
      The Global Human Resource Program Bridging Across Physics and Chemistry
    • 発表場所
      首都大学東京国際交流会館
    • 年月日
      20140131-20140131
  • [学会発表] NMRタンパク質立体構造決定のための新規構造最適化法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵,嶋崎真那人,三島正規,伊藤隆,Peter Guentert
    • 学会等名
      CREST/構造生命 合同キックオフミーテイング・研究成果報告会
    • 発表場所
      ラフォーレ琵琶湖
    • 年月日
      20131219-20131220
  • [学会発表] In-cell NMRを用いた,HeLa細胞内のストレス応答によるCa2+濃度変化のモニタリング2013

    • 著者名/発表者名
      鴨志田一,晴柀貴洋,濱津順平,井上仁, 池谷鉄兵,三島正規,白川昌宏,伊藤隆
    • 学会等名
      第52回NMR討論会
    • 発表場所
      石川県立音楽堂
    • 年月日
      20131112-20131114
  • [学会発表] Sf9細胞のin-cell NMRにおけるアミノ酸選択的安定同位体標識2013

    • 著者名/発表者名
      田中孝,浜津順平,清和恵美子,池谷鉄兵,三島正規,伊藤隆
    • 学会等名
      第52回NMR討論会
    • 発表場所
      石川県立音楽堂
    • 年月日
      20131112-20131114
  • [学会発表] NMR蛋白質立体構造決定のための新規構造最適化法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      嶋崎真那人,池谷鉄兵,三島正規,伊藤隆,Peter Guentert
    • 学会等名
      第52回NMR討論会
    • 発表場所
      石川県立音楽堂
    • 年月日
      20131112-20131114
  • [学会発表] NMRによる蛋白質分子立体構造解析の高精度化および 細胞内計測を目指したCSとベイズ法適用の試み2013

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵
    • 学会等名
      新学術領域4班合同ミニワークショップ
    • 発表場所
      京都大学工学部総合校舎
    • 年月日
      20131107-20131107
    • 招待講演
  • [学会発表] 圧縮センシングを用いたNMR スペクトルの復元法2013

    • 著者名/発表者名
      角越和也,池谷鉄兵,伊藤隆,清水謙多郎
    • 学会等名
      第51回 日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] NMR タンパク質立体構造決定のための新規構造最適化法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      嶋崎真奈人,池谷鉄兵,三島正規,伊藤隆,Peter Guentert
    • 学会等名
      第51回 日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] Structural analysis of proteins inside living sf9 cells by in-cell NMR spectroscopy2013

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T., Hamatsu J., Seiwa E., Ikeya T., Masaki M. and Ito Y.
    • 学会等名
      5th Asia-Pacific NMR Symposium
    • 発表場所
      Brisbane, Australia
    • 年月日
      20131027-20131031
  • [学会発表] 天然変性蛋白質の細胞内解析に向けたペプチド分子の in-cell NMR 計測2013

    • 著者名/発表者名
      池谷鉄兵
    • 学会等名
      「天然変性タンパク質」領域班会議
    • 発表場所
      ひだホテルプラザ
    • 年月日
      20130903-20130905

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi