研究課題
NMR信号処理法の開発では,これまで開発を進めてきたQuantitative Maximum Entropy(QME)を4D NOESYスペクトル等に応用し性能評価を行った.また,近年活発に応用が進んでいる圧縮センシング法との性能比較の結果,QMEはこれら手法と比較しても同等かむしろより正確にスペクトルを再構成可能であることを示した.これらの成果は,2015年のBiochem. Biophys. Res. Commun. 誌に報告した.NMR立体構造計算手法の開発では,本年度は特に常磁性金属を用いたNMRの手法に関していくつか研究が進展した.常磁性金属は,最も標準的なNOEを用いた手法に比べて,遠距離の距離情報,角度情報を得ることができるため近年研究が活発化している.本年度は,常磁性金属を蛋白質に結合させるために新たに設計したキレートタグDOTA-M8の合成に成功し,モデル蛋白質にこれを簡便かつ安定的に結合させられることを示した.この蛋白質試料を用いたNMR実験では,in-vitro環境下で,PRE(Paramagnetic Relaxation Enhancement)やPCS(PseudoContact Shift)の観測にも成功した.今後はこのスペクトルの帰属を行い,化学シフトやピーク強度変化から,距離,角度情報を抽出予定である.計算手法開発の観点では,磁化率テンソルを計算する新規手法を,我々が開発を進めているNMR立体構造計算プログラムCYANAに実装することに成功した.これにより,構造の最適化と磁化率テンソルの計算を再帰的に行うことが可能なため,より高精度の構造情報を習得可能となる.シミュレーションデータを用いた計算実験では,良好な結果を示したことから,今後はDOTA-M8を用いた実際の実験データを用いて,本手法の有用性を検証する.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 7件)
Biochem. Biophys. Res. Commun.
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