本研究では,細胞内におけるタンパク質の動的構造を,In-Cell NMR 法と 19F-NMR 法を組み合わせて観測する技術を確立し,これまで in vitro で解析されてきた高次構造レベルでの機能メカニズムを,in vivo の環境下で解明することを目的とする.本研究の平成26年度における研究成果は以下の通りである. 1:平成25年度に引き続いて、In-Cell NMR法における感度の問題を克服するために様々なアミノ酸標識技術、特に高感度19F標識アミノ酸であるトリフルオロメチオニンによるタンパク質標識技術の応用について研究を行った。その結果、目標であるVRK1キナーゼタンパク質のトリフルオロメチオニン標識に成功した。さらに、19F標識VRK1タンパク質の大量合成・精製に成功し、超高感度19F-NMRスペクトルの測定にも成功した。 2:次に、得られたトリフルオロメチオニン標識VRK1キナーゼタンパク質を培養細胞に導入する実験を行った。その結果、少量ながら細胞内に標識タンパク質を導入することに成功し、生きた細胞内におけるトリフルオロメチオニン標識VRK1キナーゼタンパク質のNMRスペクトルの測定を行った。現在導入量を増やすため条件検討を行っており、測定感度の向上を進めている。以上が平成26年度の成果である。 本研究期間全体を通じて、細胞内への安定同位体標識タンパク質の導入方法の開発から、高感度19F標識アミノ酸の開発、さらには19F標識アミノ酸によるタンパク質標識技術と大量合成技術の開発に成功し、実際に19F標識VRK1キナーゼタンパク質のNMRスペクトルの測定を行った。以上の成果は、生きた細胞内におけるタンパク質の動的構造の解明に大きく貢献するものである。
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