研究課題
若手研究(B)
申請者は、リゾリン脂質の中でも、特に脂肪酸鎖長の大きい極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質について、高速液体クロマトグラフィーー質量分析計を用いた定量測定系の構築を行った。生体中では、極長鎖脂肪酸はペルオキシソーム内で分解されており、皮膚や精巣などの一部の臓器を除き非常に低濃度に抑えられている。この分解機構が破綻すると、極長鎖脂肪酸含有脂質が蓄積し、副腎白質ジストロフィー等の疾患に代表される、脱髄等の諸症状を呈する。しかしながら多様な極長鎖脂肪酸含有脂質がどのように脱髄に関与するかという点について、殆ど明らかにされておらず、有効な治療薬等が見出されていない。近年、極長鎖含有リゾリン脂質が脱髄の原因物質であるとの報告があるが、具体的な脂質の種類、およびその作用機序は不明である。モデル動物であるゼブラフィッシュはミエリンを有している。さらに、胚が透明であることから、各種脂質の産生、代謝を制御する遺伝子のミエリン動態における機能の解析に適する。極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質の定量系を構築したことにより、ミエリンの動態と各種極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質自体の相関性を評価することが可能になった。
2: おおむね順調に進展している
申請者は、リゾリン脂質の中でも、特に脂肪酸鎖長の大きい極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質について、高速液体クロマトグラフィーー質量分析計を用いた定量測定系の構築を行った。特に、定量測定系の構築において、数マイクログラム程度の標品の存在は必要不可欠であるが、対象とする極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質の標品は商業的には入手不可能である。そこで、申請者は極長鎖脂肪酸含有脂質が蓄積することが明らかにされている分裂酵母変異体を用い、その抽出脂質を用いて標品の代用とすることで定量測定系を構築した。
極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質の定量系を構築したことにより、ミエリンの動態と各種極長鎖脂肪酸含有リゾリン脂質自体の相関性を評価する。また、副腎白質ジストロフィーなどの極長鎖脂肪酸含有脂質を蓄積する疾患の患者由来の、血液、皮膚などの組織標本由来の脂質を網羅的に質量分析計を用いて解析し、病態との相関性のある新たな極長鎖脂肪酸含有脂質を見出す。
極長鎖含有脂質を含む各種標品脂質の入手ができなかった為、次年度使用する研究費が発生した。当該研究費並びに翌年度以降に請求する研究費と合わせた研究費は、高速液体クロマトグラフィーー質量分析器による脂質分析の為に用いる。移動相、フィルター、チューブなどの各種消耗品の他、新規脂質の分析の為に、HPLCカラムを購入する。また、患者皮膚切片より線維芽細胞を樹立し、維持するための血清、培地等を購入する。
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Anal Bioanal Chem
巻: 403 ページ: 1897-1905
10.1007/s00216-012-6004-9