本研究は、微細藻類が環境中に極微量しか存在しない必須元素セレン(Se)を効率よく利用するため編み出した、Se輸送体及びSe蓄積代謝系を明らかにすることが目的である。 Se輸送体を同定するため、発現解析より得られた亜セレン酸輸送体候補遺伝子8つの全長配列を決定した。このin vitro合成系では、膜タンパク質を輸送活性測定に使用するため、リポソームを添加して行った。この際、14C-Leucineを用いリポソーム画分に8つ全ての膜タンパク質の合成を確認した。現在は、輸送活性測定系を調整中である。現在まで、亜セレン酸に特異的な輸送体の報告はなく、本研究により同定できた時は世界初の知見となりえる。次に、Se含有化合物を同定するため、放射性セレンでエミリアニアのSe含有化合物をラベルした。この際、比較対象としてSeを要求するマミエラとSeを要求しないイソクリシス、マミエラのSe含有化合物も同様に薄層クロマトグラフィーを用い分析した。その結果、エミリアニアとSeを要求するマミエラから5つのスポット(LMW1~5)が検出された。一方、Seを要求しない2種では、LMW4が主な割合を占めていた。このことは、微細藻類におけるSe代謝系が似通っている可能性を示唆している。これらLMW1~5を同定するため、薄層プレートより削り出し同定を試みたが、不純物が多く同定には至っていない。また、LC/MSやCE/MSを用いた同定も試みたが、量的な問題や解析プログラムの問題から同定には至らなかった。近年マグロの血液からセレノネインという新規Se含有化合物が発見されており、LMW1~5の中にも新規Se含有化合物が含まれていることが期待できる。また、微細藻類のSe含有化合物は、魚へのSe供給源と考えられるため、LMW1~5を同定することで海洋生態系におけるSe循環を知る手がかりとなることが期待できる。
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