研究課題/領域番号 |
24770118
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高野 和儀 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (60466860)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 筋原繊維形成 / アクチン重合 / 神経支配 / 筋肥大 |
研究概要 |
本研究では筋原線維のアクチン線維形成における神経支配の必要性を生体内と初代培養系において明らかにし,この原理に基づいて,筋肥大とそれにともなう筋原線維形成を骨格筋と神経細胞の共培養系により再現することを目的としている。当該年度では,まず,マウス座骨神経の切除を行った。その結果,前脛骨筋において筋萎縮が誘導されたことを凍結切片の筋断面積より確認した。また,IGF-1シグナルの下流におけるAktやGSK-3betaの局在を調べたところ,筋原線維Z帯に局在するAktやGSK-3betaは除神経によっても局在変化がみられなかった。さらに,来年度の計画である初代培養での骨格筋・神経共培養系の確立を行い,遺伝子導入系として,EGFP-骨格筋型アクチンを発現するアデノウイルスを作製した。来年度はこれを用い,神経支配と筋原線維アクチン動態の関係について初代培養系を中心に解析を行う予定である。一方,骨格筋と心筋の初代培養系ではZ帯からのアクチンフィラメント形成が起こらないことがこれまでに報告されている。今年度の研究において,不随意筋である心筋においても骨格筋と同様に生体内ではZ帯からアクチンフィラメント形成が引き起こされることを明らかにした。したがって,骨格筋においては神経支配に付随した筋収縮等のイベントがIGF-1シグナルを調節している可能性が新たに考えられた。今後は,心筋において特に筋原線維形成が必要な代償性心肥大期におけるアクチンフィラメント形成の機構も解明する。この結果からアクチンフィラメント形成機構の神経支配との関係を考察し,横紋筋における筋原線維アクチンフィラメント形成を引き起こすための必要条件を詳細に調べていく方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した内容以上の成果が上がっていることや,来年度への準備状況を考慮すると,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
不随意筋である心筋の生体内における解析から,神経支配に付随した筋収縮等のイベントがIGF-1シグナルによるアクチン線維形成を調節している可能性が新たに考えられた。したがって,今後は心筋を研究計画に加えて,特に筋原線維形成が必要な代償性心肥大期におけるアクチンフィラメント形成の機構を解明する。この結果を踏まえて,骨格筋と神経細胞の共培養により,N-WASP-nebulinによる筋原線維Z帯からのアクチン重合をEGFP-アクチンの取り込みやFRETを用いて可視化する。以上の解析から,生理的な筋肥大におけるアクチン動態制御の機構とその必要条件を詳細に調べていく方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に薬品や実験動物等,器具類などの物品費に充当させて,さらに研究を推進させる予定である。 薬品費には本研究に用いる一般試薬,生化学・分子生物学用試薬,酵素,抗体,PCR用プライマー,siRNAなどの経費が含まれる。初代培養系やプラスミドDNA構築に必要な培養皿やチップ,チューブなどの消耗品は器具類として含まれ,初代培養細胞系で使用する血清・培地・トランスフェクション試薬などは,細胞培養用試薬として薬品費に含まれる。本研究は,マウスの骨格筋や心筋を用いて解析を行うため,マウスの購入費や飼育費が実験用動物等に含まれる。
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