研究課題/領域番号 |
24770120
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笠井 倫志 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (20447949)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生物物理 / 1分子計測 / Gタンパク質共役型受容体 / ダイマー形成 |
研究概要 |
本研究に先立ち、私は、三量体Gタンパク質共役型受容体、いわゆるGPCRのうち、クラスAと呼ばれるサブファミリーに属するGPCRが、細胞膜上で、100ミリ秒程度で解離する一時的なダイマーを形成するという、ダイマー・モノマーの動的平衡下にあることを示した。本研究課題では、GPCRダイマー、あるいは、動的なダイマー・モノマー変換の生物学的な意義を検証することを目的とした。そのために、直接の下流シグナル分子である、三量体Gタンパク質のうち、GαサブユニットをGFPでラベルし、代表的なGPCRの一つである、β2アドレナリン受容体と同時に蛍光1分子観察を行い、三量体Gタンパク質のGPCRダイマーへのアフィニティを調べた。その結果、リガンドによる刺激前に、GPCRと3量体Gタンパク質は動的な結合解離を繰り返しており、GPCRのモノマーとダイマーの区別がなく、両者への結合時間は100ミリ秒のオーダーであることが分かった。 つぎに、GβサブユニットをGFPでラベルし、同様の解析を行ったところ、Gαと同様に、GPCRのモノマーとダイマーの両者にほぼ等しく、約100ミリ秒のオーダーで動的に結合していることが分かった。 この結果は、従来報告されていたプレカップルモデル、すなわち、GPCRと3量体Gタンパク質が、GPCRを刺激する以前から予め3量体Gタンパク質と結合している、というモデルを一部支持するものであったが、本研究では、さらに、GPCRと3量体Gタンパク質との結合が一過的であること、また、3量体Gタンパク質のGPCRへの結合は、GPCRダイマーとモノマーに影響されないこと、が新たに分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPCRと3量体Gタンパク質のGαについて、ビデオレートでの2色同時蛍光1分子観察を行い、GPCRダイマーとモノマーのそれぞれ別々に結合時間を決定することができた。同様に、GPCRと3量体Gタンパク質のGβについても同様に、2色同時蛍光1分子観察を行い、GPCRダイマーとモノマーのそれぞれ別々に、結合時間を決定することができた。 アゴニスト添加後に同様の解析を詳細に行ったところ、予備実験の結果とは異なり、GPCRダイマーおよびモノマーと、3量体Gタンパク質Gαサブユニットとの相互作用は、リガンド添加でも大きく変化しなかった。同様に、3量体Gタンパク質Gβとの差もなかった。すなわち、アゴニスト刺激によっても、GPCRと三量体Gタンパク質との相互作用は変化せず、常に動的な結合解離を行いながらシグナルを伝えているらしいことが分かってきた。これらの結果を得ることで、本研究はおおむね順調に進んでいるとした。
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今後の研究の推進方策 |
GPCRダイマーの生物学的な意義を引き続き検討することを、本研究の推進方策の中心課題とする。2つの三量体Gタンパク質が、同時にGPCRダイマーにリクルートし、結合する可能性を検討するために、三量体Gタンパク質のうちの、Gsサブユニットを遺伝的に欠損した細胞株を用いて、GPCRと三量体Gタンパク質Gαサブユニットとの二色同時1分子観察を行う。これは、ほぼすべての培養細胞株には、Gαタンパク質が内在的に発現しているために、こうした細胞にGFPでラベルしたGαタンパク質を発現させても、Gα全体に対するGFPのラベル効率が低く、2つの三量体Gタンパク質が、同時にGPCRダイマーにリクルートしてくるイベントを検出することができないからである。同時に、siRNAなどを用いて、内在性Gαサブユニットの発現を大きく抑制した細胞株も作成するよていである。このようなGα欠損細胞株、あるいは、Gαの発現抑制細胞株を用いて、GPCRとGαタンパク質との同時蛍光1分子観察を行い、GPCRダイマーの、三量体Gタンパク質の結合時間と、結合のストイキオメトリーに注目して、GPCRダイマーの生理学的な機能の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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