研究課題
本研究では、蛍光色素1分子観察法を用いてタンパク質を1分子ずつ可視化し、分子同士の相互作用を直接にとらえる、という手法を用いる事が大きな特徴である。この方法を用いて、3量体Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のダイマー形成、および、下流のシグナル伝達機構との関わりを明らかにすることが本研究の目的である。代表的なGPCRの1つである、β2アドレナリン受容体(b2AR)をもちいて、生細胞膜上での受容体の1分子観察を行った結果、b2ARは、膜上をほぼランダムに拡散することで、動的なダイマー(2量体)とモノマー(単量体)を形成しており、この2つの状態の間で動的平衡にある事が分かった。そこでまず、(1)この平衡を記述するモノマー・ダイマーの平衡定数、ダイマー形成のオフレート、オンレートをそれぞれ決定した。次に、アゴニストを加えて受容体を活性化すると、(2)b2ARのダイマー寿命は、刺激前と比べて約40%延びるという、ダイマー形成が下流のシグナル伝達に寄与している事を示唆する結果を得た。さらに、b2ARにリクルートしてくる下流の3量体Gタンパク質の様子を、蛍光2色同時1分子観察を行って観察し、ダイマーとモノマーについてそれぞれ分けて相互作用を調べると、(3)受容体の活性化の前後で、下流の3量体Gタンパク質とダイマーとモノマーのそれぞれに対する結合時間や頻度に大きな変化は見られなかったが、b2ARと3量体Gタンパク質は、寿命約50ミリ秒以下という極めて短時間結合したのちに解離する、という様子を繰り返しているらしいことが分かってきた。以上の結果から、GPCRは、それ自身が動的にダイマー形成と解離を繰り返しながら、下流の3量体Gタンパク質分子と一時的に相互作用して、シグナルを下流に伝えるという、GPCRのシグナル伝達の様子の一端を解明することができた。
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