研究課題
申請者はミトコンドリア形態変化の生理的な意義を明らかにするため、ミトコンドリアが極めて特徴的な分布をとる筋組織のミトコンドリアに注目し、研究を行っている。筋肉ミトコンドリア分裂不全(筋KO)マウスは体重・行動はほぼ正常であるにもかかわらず生後8日ごろ心筋収縮力の低下により致死となる。ミトコンドリアは動的なオルガネラであり細胞内で融合と分裂を繰り返しているが、その動的構造変化の分子機構及び生理的意義は近年までほとんど理解されていなかった。当該年度は研究実施計画にあるようにこの筋KOマウスの解析を中心に進めた。このマウスの死亡時期が生後8日ごろと極めて限局していることからも、ミトコンドリアの分裂がある特定の時期の組織機能(特殊化した細胞群)の機能維持に重要であることが考えられる。そこで、週齢をおってマウス心筋におけるミトコンドリアの形態、さらにはそれら形態を制御する関連因子群の発現について検討をおこなった。また、ミトコンドリアの機能維持に重要なミトコンドリアゲノムコピー数の解析、核様体の大きさや分布などについてもあわせて解析を進めている。一方で筋KOマウス由来の初代心筋培養細胞とその同腹子の野生型マウスの初代心筋培養細胞を樹立し、薬剤に対する応答や細胞の増殖などを初代培養細胞レベルでも解析を進めることができた。これらマウス個体・組織での解析と細胞レベルでの解析からミトコンドリア分裂の生理的意義が明らかになりつつある。
2: おおむね順調に進展している
研究目的に沿っておおむね順調に進展している。個体におけるミトコンドリアの形態変化の生理的な意義については、筋組織の時期特異的な成長・分化に重要であるということが明らかになりつつある。ミトコンドリア分裂欠損による筋細胞の分化・成長シグナルの影響を分子機構のレベルで明らかにし、個体での研究にフィードバックすることでより発展的な成果を目指す。そのために次年度に向けての条件欠損マウスの構築やその他の研究材料についての準備も進めることができている。また申請者は研究協力者らとともに、培養細胞を用いた解析からmtDNAの分配機構の新たな知見を得ることができた。この知見については現在、国際学術誌に投稿し査読を受けている。このように目的達成のための研究実施体制についても構築できつつある。
研究計画に従い、個体(組織)レベルの解析と細胞レベルの解析を両面から進め、得られた結果を互いにフィードバックすることでより研究を推進される。これまでに蓄積してきた結果を含めて本研究期間の成果として取りまとめ、国内外の学会、学術誌への投稿という形で発表する。
本研究課題の研究領域の国際学会(DynaMito2013 10/28~11/1)が沖縄で開かれることが決まり、領域を代表する研究者が世界中から集まる。申請者自身の研究も順調に進捗していることから本学会への参加を予定している。当初の計画には、国際学会参加に関する予算を組み込んでいなかったことから、今年度予算の一部を次年度に計上した。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Cell Science
巻: 126 ページ: 176-185
10.1242/jcs.111211