ミトコンドリアは、細胞内では融合と分裂を頻繁に繰り返しながらダイナミックにその形態を変化させていることが知られている。近年、ミトコンドリアの形態変化とその生理的な意義についての報告が積み重ねられつつある。今回、ミトコンドリア分裂因子であるDrp1の筋肉における生理的意義に焦点をあてて研究を進めた。まず本研究期間において、ミトコンドリアの形態変化とミトコンドリアDNA(mtDNA)のダイナミクスに関して新たな知見を得ることができた。mtDNAは核様体と呼ばれる構造体を形成し、ミトコンドリア内に存在することは古くから知られていたが、その挙動について詳細に解析されていなかった。我々は、ミトコンドリア分裂が核様体の分布を制御していることを明らかにした。ミトコンドリアの分裂を抑制した細胞では、ミトコンドリアの融合促進に伴い多数の核様体が集合し巨大化していく様子が観察されるとともに大きく膨らんだミトコンドリア(ミトバルブ)が多数出現した。さらにこのような核様体の動的な変化は、内膜クリステの構造異常やアポトーシスの進行を遅延させること分かった。この新たな知見とともに筋組織におけるミトコンドリアの分裂が重要な機能を果たしていることを明らかにした。
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