研究課題
本研究は、アスパラギン(N)型糖鎖修飾を触媒するオリゴ糖転移酵素が、小胞体内腔でドリコール結合型糖鎖を分解し、遊離糖鎖を生成する活性を持つことを証明することを目的としている。最終年度は、PNGaseとENGase(細胞質において糖タンパク質から遊離糖鎖を生成する酵素)を欠損したマウス胎児線維芽細胞(MEF)を用いてオリゴ糖転移酵素(Stt3AおよびStt3B)のノックダウンを行った。MEFはトランスフェクション効率が悪いため、レトロウイルスを用いてStt3A/Bに特異的なshRNAを導入した。ウイルス感染率は90%以上であったにも関わらず、遺伝子発現を効率良く抑制することが出来なかった。様々なコントロール実験も行ったが、改善されなかった。一方、上記MEF細胞をジギトニンを用いてセミインタクト化し、遊離糖鎖生成反応を再構成することに成功した。さらに、この反応がN型糖鎖修飾反応と競合したことから、オリゴ糖転移酵素が遊離糖鎖生成活性を持つことが強く示唆された。30年以上前から、小胞体内腔で生成される遊離糖鎖の存在は知られていたが、原因酵素は未同定のままであった。本研究では、出芽酵母(Harada et al. (2013) J. Biol. Chem.)および哺乳動物細胞(Harada et al. manuscript in preparation)を用い、オリゴ糖転移酵素が小胞体内腔で遊離糖鎖を生成することを明らかにした。本研究によって、新たな糖鎖の代謝機構の研究への分子基盤が確立されたと確信している。
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Proc Natl Acad Sci U S A
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