本研究では、小胞体内腔において、糖鎖の代謝に関わる酵素の同定に成功した。N型糖鎖修飾はタンパク質の翻訳後修飾の一つで、タンパク質の立体構造の形成や分解などを調節する役割を持つ。N型糖鎖修飾を行う酵素はオリゴ糖転移酵素(OST)と呼ばれ、ドリコール結合型糖鎖(DLOs)をタンパク質中の特定のアスパラギン残基に転移する。本研究では、出芽酵母および哺乳動物細胞を用いて、OSTがDLOsを加水分解する活性を持つことを証明した。本活性は、30年以上前から知られていたが、原因酵素とその生理機能は不明のままであった。本研究によって、この新たな糖鎖の代謝機構の生理機能の解明に向けた分子基盤が確立された。
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