研究課題
細胞内で合成されたタンパク質への糖鎖付加は、真核生物において共通の翻訳後修飾であり、その結合様式の違いにより、アスパラギン残基に結合するN-結合型糖鎖、セリンまたはトレオニン残基に結合するO-結合型糖鎖に分類することが出来る(図1)。これらの糖鎖修飾は、タンパク質自体の安定化を促すだけでなく、細胞の発生・分化、細胞間相互作用、組織形成などの様々な生体内のプロセスにおいて重要な役割を果たしている。細胞質にはタンパク質と結合しない状態の糖鎖(遊離糖鎖)が存在することが知られるが、この遊離糖鎖生成・代謝の生物学的意義については不明な点が多い。我々は、マンノースを炭素源とした培養条件下で出芽酵母は、今まで報告のないようなO-結合型糖鎖と同じ構造を持つ遊離糖鎖を生成することを見出した。このことから、出芽酵母はほかの生物種では見つかっていない、新規のエンドO-グリカナーゼを持っている可能性が示唆される。本研究では培地へのグルコースの添加が遊離O型糖鎖の生成を阻害することを見いだした。また、ある転写抑制因子の 欠損株はマンノース培養条件下で、野生株の10倍もの過剰な遊離 O 型糖鎖を生成することを見出した 。この過剰な遊離O型糖鎖生成の結果、細胞内の糖タンパク質からの過剰な O-結合型糖鎖の脱離が起こり、細胞壁ストレスによる生育阻害が観察された。従って、新規エンドO-グリカナーゼの活性は特異的な転写抑制因子により厳密に制御されていることが示唆された。
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J Biol Chem.
巻: 288(45) ページ: 32673, 32684
10.107
http://jcggdb.jp/GlycoPOD/