研究課題/領域番号 |
24770143
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 久美子 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00585979)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体モーター / 非平衡統計力学 |
研究概要 |
これまで、タンパク質回転モーターF1-ATPaseに非平衡統計力学の揺らぎの定理を応用して回転トルクを測定する理論を構築してきた。非平衡統計力学の揺らぎの定理はもともとエントロピー生成の分布の対称性に関する理論であるが、これを用いて、生体モーターの駆動力測定を行う方法を研究して来た。本研究ではこの定理を神経細胞内で輸送されるオルガネラに働く力の測定に応用することを試みた。そのために、マウスから上顎神経節を摘出し、神経細胞を培養する動物実験を行った。ミトコンドリアやエンドソームなどのオルガネラは、微小管に沿ってタンパク質モーターであるキネシンやダイニンに輸送される。これらのモーターが輸送する際、オルガネラにかかる力を測定することを試みた。神経細胞を用いてミトコンドリアとエンドソームを蛍光顕微鏡で観察した。動画から得られたミトコンドリアとエンドソームの重心の運動を解析した。揺らぎの定理から見積もったオルガネラに働く力は、PC12細胞内のミトコンドリアに働く力の値と類似していた。神経細胞では、力の分布から輸送に関連するキネシンやダイニンの個数を見積もることを目標にしている。今後、見積もった値の妥当性を検証したい。神経細胞内の観察で得られた結果をin vitro実験と比較するために、微小管上をキネシンに輸送されるカルゴの運動を調べたい。そのための実験系を立ち上げた。今後は、in vitro実験で、細胞内と類似した環境を構築するため、粘性を上げたり、カルゴの輸送に関連するモーターの個数を制御することを考えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標にしていた神経細胞の培養が成功した。ミトコンドリアやエンドソームの蛍光観察も成功し、解析も順調である。来年度は、得られた結果の妥当性を別実験から検証するなど、検証実験を行い結果をまとめることを目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞を用いた実験を継続する一方で、キネシンのin vitro実験を軌道に乗せる。
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次年度の研究費の使用計画 |
キネシンのin vitro実験を軌道に乗せるために、一般試薬の購入を行う。また、実験結果を議論したり、発表したりするため出張を行う。キネシンのin vitro実験の立ち上げが遅れたため、次年度使用額が生じた。
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