研究課題
細胞が前後軸を形成する時に前方でアクチン重合が盛んに起こり、アクチン細胞骨格は自己組織的に極性化する。私は、このアクチン細胞骨格の動態を単分子可視化法、単量体アクチン濃度の時間変化を測定するs-FDAP法、蛍光退色後回復法という三つの異なる顕微鏡法で研究を行った。単分子可視化法は、渡邊直樹教授(東北大)により開発され、アクチン細胞骨格に取り込まれたアクチン単分子やアクチン重合因子mDiaの動態を単分子で観察することができる。この方法で細胞に物理刺激を加えた時のmDia分子の動きからアクチン線維の伸長が盛んに起き、アクチン細胞骨格が再構成されることが明らかになった。私は、この時s-FDAP法によって単量体アクチン濃度が約10%上昇することを見出し、このmDiaの活性化機構に単量体アクチンの濃度上昇が関与していることを明らかにした。この成果は物理刺激によるアクチン細胞骨格の再構成における新規メカニズムを示しており、Nature Cell Biologyに報告した。さらに移動する細胞の進行方向に伸ばされる膜突起(ラメリポディア)でのアクチン線維のターンオーバーを蛍光退色後回復法で観察した。この時、蛍光退色させるGFP融合アクチンでアクチン線維のターンオーバーを観察し、さらに退色させない蛍光タンパク質mCherry融合アクチンをレファレンスとして用いた。その結果、これまでGFP融合アクチンだけの蛍光退色回復法では観察されてなかったラメリポディア全体でアクチン線維のターンオーバーを見出した。この結果は、単分子可視化法によるアクチン単分子の観察結果と一致した。これまで単分子可視化法と蛍光退色回復法で異なる観察結果が報告されていたが、本研究によってその溝が埋められ、ラメリポディアでのアクチン線維のターンオーバーの実体が明確になった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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