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2012 年度 実施状況報告書

細胞外シャペロンによる蛋白質凝集抑制機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24770150
研究機関福井大学

研究代表者

小澤 大作  福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (60554524)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードシャペロン / アミロイド / アミロイドーシス / 蛋白質品質管理
研究概要

本研究は、細胞外シャペロンによる蛋白質品質管理機構の詳細に迫り、細胞外で蛋白質の異常凝集が起きるアミロイドーシスなどの疾患の治療・予防法開発に向けた端緒を掴むことを目的とする。細胞外シャペロンであるα2-マクログロブリン(α2M)やクラステリン等以外でアミロイド線維と共存する急性期蛋白質もまたシャペロン活性を持つ可能性がある。本年度ではまず初めに、モノクロメーター搭載型マイクロプレートリーダーを用いたhigh-throughput系により、アミロイド線維形成を抑制する新規細胞外シャペロンを探索した。その結果、血清アミロイドP成分やC反応性蛋白質が、アルツハイマー病に関連するアミロイドβの自発的線維形成を濃度依存的に抑制することを明らかにした。これらの蛋白質は、II型糖尿病に関連するアミリンのアミロイド線維形成もまた抑制することが分かった。さらに、血清アミロイドP成分は、β2-ミクログロブリンアミロイド線維の形成を遅延させることを明らかにした。以上のことから、血清アミロイドP成分とC反応性蛋白質は、新たな細胞外シャペロン候補であることが示唆される。
これまでの細胞外シャペロン研究では、細胞外シャペロンが熱ショック蛋白質のように、変性した蛋白質の構造を巻き戻すリフォールディング能を保持するかについては詳細に検討されていない。従って、あらかじめ塩酸グアニジンで変性させたルシフェラーゼに細胞外シャペロンを添加し、酵素活性測定から細胞外シャペロンのリフォールディング活性を評価した。その結果、塩酸グアニジンで変性させたルシフェラーゼにα2Mを添加するとルシフェラーゼの活性が回復することが明らかになった。つまり、α2Mのリフォールディング能が示された。この結果は、細胞外蛋白質品質管理機構の新たな一面を示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究計画では、(1)モノクロメーター搭載型マイクロプレートリーダーを用いたhigh-throughput系によるアミロイド線維形成を抑制する新規細胞外シャペロンの探索(2)既知の細胞外シャペロンとピックアップされた細胞外シャペロン候補蛋白質のアミロイド線維形成抑制や酵素の凝集抑制、リフォールディング活性の評価(3)炎症部位等で見られる条件下での細胞外シャペロンと変性蛋白質の親和性変化の解析を計画していた。(1)と(2)に関しては、これまで行ってきた実験系を基に、順調に研究を進めており、興味深い知見が得られた。(3)の細胞外シャペロンと変性蛋白質の親和性変化の解析は、次年度の研究計画に持ち越し、次年度の研究計画予定であった変性蛋白質の細胞外シャペロン結合領域の同定に関する研究の準備を進めた。以上のことから、一部の計画を変更したものの、大幅な遅延はない。

今後の研究の推進方策

細胞内の分子シャペロンは、変性蛋白質の疎水性領域を認識することで変性蛋白質と相互作用し、蛋白質品質管理を行うと考えられている。また、α2Mで示されたような構造変化が他の細胞外シャペロンでも見られる場合、細胞外シャペロンは自ら疎水性領域を露出し、その結果、変性蛋白質の疎水性領域との間に疎水性相互作用を生み出し結合することで、蛋白質凝集を抑制すると考えられる。それ故、(a) ANS蛍光測定から細胞外シャペロンと変性蛋白質の分子表面の疎水性度を評価する。加えて、(b) 等温滴定型熱量計を用いて、細胞外シャペロンと変性蛋白質の結合による熱量変化の滴定曲線を得て、結合比・結合定数・エンタルピー変化・エントロピー変化を求め、結合の駆動力を推測する。さらに、(c) 重水素交換と核磁気共鳴法を組み合わせ、変性β2-mの細胞外シャペロン結合領域を同定する。
現在、細胞外シャペロンは異常蛋白質をレセプターを介したエンドサイトーシスによりリソソームまで輸送することで、細胞外の蛋白質品質管理を行っていると想定されている。しかし、細胞外シャペロンがどのようなサイズの異常蛋白質までをリソソームに輸送できるかは不明である。申請者はこれまでの研究から、α2Mがβ2-mのモノマーやオリゴマー、アミロイド線維と結合することを明らかにしている。そこで、蛍光色素ラベルしたβ2-mモノマー・オリゴマー・アミロイド線維を作製し、マクロファージあるいは肝細胞培養系にα2Mとそれぞれのβ2-m標品を添加、どの構造状態にあるβ2-mまでがリソソームに輸送されるかを蛍光顕微鏡を用いて観察する。
以上の結果から、細胞外シャペロンによる蛋白質品質管理機構の詳細に迫る。

次年度の研究費の使用計画

研究費は主に、計画した試験管内実験の研究試薬やガラス・プラスチック器具などの消耗費に使用する予定である。また一部は、日本生化学会大会の旅費、研究成果を論文として発表するための論文投稿料や論文校閲にも使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 細胞外シャペロンによるアミロイド線維形成抑制機構の解明2012

    • 著者名/発表者名
      小澤大作, 長谷川一浩, 李 映昊, 櫻井一正, 柳 浩太郎, 大越忠和, 後藤祐児, 内木宏延
    • 学会等名
      第12回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20120620-20120622
  • [学会発表] Molecular mechanisms of β2-microglobulin amyloid fibril formation2012

    • 著者名/発表者名
      Ozawa D, Hasegawa K, Ookoshi T, Naiki H
    • 学会等名
      XIIIth International Symposium on Amyloidosis
    • 発表場所
      Groningen(the Netherlands)
    • 年月日
      20120506-20120510
  • [図書] 変革する透析医学(透析アミロイドーシスの病態)2012

    • 著者名/発表者名
      小澤大作,風間順一郎,内木宏延
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      医薬ジャーナル社

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公開日: 2014-07-24  

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