研究課題/領域番号 |
24770154
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 助教 (20512627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生理学 / 概日リズム / シアノバクテリア |
研究概要 |
概日リズムを生み出している分子の種類や制御ネットワークの形は種間で相同性があまりない。 一方低温環境下では概日リズムが消失することが知られている。非線形動力学の知見によれば、 リズムの消えるシナリオは(1)振幅が消失するせいでリズムが消える、(2)ある位相で停止し進まなくなるためリズムが消えるという 2 つのどちらかである。シアノバクテリア、植物、ハエ、哺乳類培養細胞を利用して、(1)か(2)のシナリオのどちらを採用しているのかを探索し、生物種によらない普遍的な原理の追求を目指す。このシナリオを見極め、周期の温度補償性のメカニズムという概日リズム研究上の未解決問題に部分的だが回答を与えることを本研究の目的とした。 今年度は、哺乳類培養細胞とショウジョウバエの個体に対してリズムの測定方法として生物発光という方法を用いて実験を行った。これは概日リズムの制御下にあるプロモータの下流にルシフェラーゼ遺伝子をつないだものを導入し、生物個体は発する発光のリズムを観察することによって概日リズムの観察を行う方法である。生物発光で必要なのはルシフェラーゼ遺伝子の組み替え体、インキュベータと光電子増倍管だけであり、大掛かりな設備は必要としない。 今年度の実験結果によれば哺乳類培養細胞に関しては低温で概日リズムの消失が引き起こされた。またその時の消失のシナリオは「(1)振幅が消失するせいでリズムが消える」であり、これはKaiCリン酸化リズムと同じである。当初の期待通り低温消失現象のメカニズムにおいて普遍性を有していると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、シアノバクテリア・ハエ・哺乳類・植物の4つに関してリズムを観察することを目標としている。現在の状況は(i)シアノバクテリア:実験のセットアップが完了(ii)ハエ:実験のセットアップが完了、計測中(iii)哺乳類:計測終了(iV)植物:研究のセットアップ中という状況である。 おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は未測定の生物(シアノバクテリア・ハエ・植物)に関して計測を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
○物品費:生物発光の測定に必要な消耗品に用いる。 ○旅費:ヨーロッパ時間生物学会(EBRS)もしくは時間生物学会で成果を発表する。また試料の提供のために出張をおこなう。
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