本研究では、近年の大規模な生体分子分子動力学シミュレーションから得られるトラジェクトリデータを統計処理し、科学的知見を得るための統計解析フレームワークを開発した。特に、近年シミュレート可能となってきたタンパク質機能に関わる構造変化のデータを使って以下の2つの実証研究を実施し、その有効性を示した。(1)アデニル酸キナーゼの数マイクロ秒トラジェクトリを統計解析し、マイクロ秒オーダーで状態遷移するローカルな部位を特定した。(2)多剤排出トランスポーターAcrBの構造変化トラジェクトリから自由エネルギー推定計算を行い、プロトン化状態の変化によって自由エネルギー地形が変化することを示した。
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