研究課題/領域番号 |
24770162
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鹿島 勲 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60613180)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | samll RNA / mRNA surveillance / Ribosome |
研究概要 |
真核細胞の遺伝子発現過程において生じうるmRNA上の異常はmRNA品質管理機構により排除される。また遺伝子発現調節および外来生物感染からの防御機構としてsmall interfering RNA (siRNA;RNA干渉)が知られている。これら一見異なるmRNA分解機構はmRNAの内部切断により標的mRNAの分解を引き起こす点で共通している。本研究では、mRNA監視・発現調節機構により生じるmRNA断片・の分解メカニズムの解明、および、リボソーム翻訳依存的な内部切断片を網羅的に同定することで新規内在性non-cording small RNAの産生経路の検討を目的として解析を進めている。 当該年度においては、昆虫細胞を用いて終止コドンを有さないmRNAとそのmRNAから翻訳されたプリペプチド鎖の解析、および、終止コドンを有さないmRNAの内部切断の解析を行った。その結果、Pelota、HBS1,ABCE1ノックダウン細胞において、1. 終結コドンを有さないmRNAが蓄積した。2. 終結コドンを有さないmRNAから産生されるポリペプチド鎖の発現が抑制された。またPelotaノックダウン細胞においては、3. 終結コドンを有さないmRNAの3’末端側で内部切断されるnon-cording small RNAが蓄積した。これらの結果は、先行する酵母の解析同様にハエ細胞において終止コドンを有さないmRNAからのリボソーム/プリペプチド鎖の解離にはPelota、HBS1、ABCE1が必要であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、下記の3つの解析を行うことを目的として開始された。 1. mRNA監視機構(NMD・NGD)およびRNA干渉により生じるmRNA内部切断片の安定性と翻訳効率の解析 2. リボソーム翻訳に依存的したmRNA内部切断片のさらなる多段階内部切断の検討 3. 次世代シークエンサーを用いた多段階mRNA内部切断片の網羅的同定および新規small RNA生成経路の検討 現在までに、研究計画書に記載したように研究計画1および2に関して基本的な解析はほぼ終了した。具体的には、ハエ培養細胞を用いて終止コドンを欠如したmRNAの翻訳効率の解析を行った。すでに酵母および試験管内翻訳系にて終止コドンを有さないmRNAの3’末端で停滞したリボソームの解離に促進的に働くことが知られている因子ハエホモログ(Pelota, HBS1, ABCE1)およびexosome 機能阻害のためにSkiタンパク質を RNA干渉法にてノックダウンした。その条件下で、細胞内に終止コドンが欠如したレポーターmRNAを産生し、5’切断片(mRNA)とそのmRNA断片由来のタンパク質の発現量に変化が観察されるかを検証し、Pelota, HBS1, ABCE1の機能破壊により1. 終結コドンを有さないmRNAが蓄積する。2. 終結コドンを有さないmRNAから産生されるポリペプチド鎖の発現が抑制する。結果を得た。研究計画2に関しても解析を進め、興味深いことに、ハエPelotaの機能破壊により、終結コドンを有さないmRNAの3’末端側で内部切断されるnon-cording small RNAが蓄積することが明らかになった。今後は、研究計画1および2に関して、siRNAによりmRNAを内部切断することで終止コドンを欠損したmRNA作成し、これまでと同様の実験を行う。また、研究計画3の準備を始める。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、主に下記の二点に集中して解析を進める。 1. 異常mRNAから産生されるポリペプチド鎖分解の分子機構 2. 次世代シークエンサーを用いたmRNA内部切断片の網羅的同定および新規small RNA生成経路の検討 まず、これまでの本研究課題で用いた材料を利用して異常mRNAから翻訳されたポリペプチド鎖の分解メカニズムの解析を始める。本研究課題を進める中で、ハエ細胞において、終止コドンを欠如したmRNAから産生されるポリペプチド鎖の分解に関与している可能性が高い分子を見出している。今後は、この分解経路が、終止コドンを有さないmRNAから産生されるポリペプチド鎖特異的な現象であるか、他の異常なmRNAから産生されるポリペプチド鎖の分解経路と合わせて解析を進めてゆく。 後者、次世代シークエンサーを用いたmRNA内部切断片の網羅的同定および新規small RNA生成経路の検討では、リボソームの翻訳停滞に依存した細胞内在性の多段階mRNA内部切断片を網羅的に解析する。すなわち、リボソームが終止コドンを欠損したmRNAの3’で停滞することにより引き起こされる、リボソームによって保護されない領域でのmRNA内部切断が細胞内でどれほどに起きているのかを検討する。具体的には、NMD、NGD、RNA干渉に関与する因子の機能阻害条件下での多段階mRNA内部切断片のリード数、また、多段階mRNA内部切断片の配列解析から多段階mRNA内部切断片の生合成経路をまず既知mRNA内部切断経路で分類する。代表的な結果を示すmRNAに関しては、cDNAおよびgenomic DNAのクローニングを行い実際分類した生合成経路によって多段階mRNA内部切断片が生じるかmRNAの配列を改変して解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は下記の項目において使用する。 1. 細胞培養実験および分子生物学・生化学実験に必要な試薬・消耗品の購入 2. 解析を進めているショウジョウバエタンパク質に対する抗体作成
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