真核細胞の遺伝子発現過程において生じうるmRNA上の異常はmRNA品質管理機構により排除される。本研究では、まず第一にmRNA監視・発現調節機構によるmRNA内部切断とその結果生じる終止コドンを欠失したmRNA(nonstop mRNA)の分解メカニズムの解明、第二に先行する酵母での知見に基づいたリボソーム翻訳停滞依存的なmRNA内部切断による新規内在性non-cording small RNAの産生経路の検討を目的として解析を始めた。 mRNA監視・発現調節機構によるmRNA内部切断とその結果生じる終止コドンを欠失したmRNA(nonstop mRNA)の分解メカニズムの解明を進めるために、ショウジョウバエ細胞を用いたnonstop mRNA 分解機構のアッセイ系を構築した。具体的には、GFPをコードするnonstop mRNAを発現するDrosophila Schneider 2 (S2) Cells安定発現株を構築し、GFP nonstop mRNAの分解機序の解析を行った。先行する酵母と同様に、GFP nonstop mRNAの分解は3'-5'および5'-3'の経路、それぞれSki:exosome複合体、エクソヌクレアーゼXrn1によって行われることを明らかにした。酵母においては、終止コドンを欠損したmRNAの3'末端からのリボソーム解離には、Dom34/Pelota:Hbs1複合体が促進的に働いていることが知られている。現在、ショウジョウバエ細胞においてリボソーム解離因子候補Pelota、Hbs1をノックダウンした条件下でのGFP nonstop mRNAの挙動を解析することで、ショウジョウバエ細胞における終止コドン非依存のリボソーム解離因子の検証を行う実験条件のセットアップができた。同条件を用いてリボソーム翻訳停滞依存的なmRNA内部切断による新規内在性non-coding small RNAの検証を行うことが出来る。
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