研究課題/領域番号 |
24770164
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大重 真彦 群馬大学, 理工学研究科, 准教授 (00451716)
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キーワード | DNAポリメラーゼ / 1分子解析 / 1本鎖DNA / マイクロ流路 / 形態制御 / 計測技術 |
研究概要 |
【研究の目的】 DNA代謝酵素をはじめとするタンパク質の機能解析の成果の多くは電気泳動を主とする解析結果によるものである。しかし、この多分子解析法では対象とする反応の前後でしか測定できないため反応過程の酵素活性やDNA代謝反応のメカニズム等が覆い隠されてしまう。また、1反応中に数百万分子以上の集合分子の挙動による平均値のみの解析結果であり、個々の分子挙動やその分布の詳細について不明な部分が多い。一方、1分子解析技術は、DNAやタンパク質の1分子を対象とした分子挙動やその分布に基づきDNA代謝反応の素過程である酵素活性やDNA代謝反応のメカニズムを解析することが可能であるため、DNA代謝反応を含む多くのDNA-酵素相互作用の分子挙動を明らかにすることを目的とした。 【昨年度までの結果】 熱硬化性高分子であるPolydimethylsioxane (PDMS)を用いた微細流路装置を作製し、送液ポンプにより流路中に調製溶液を連続的に注入する1分子観測システムを開発した。この開発した技術を基に修飾ガラス基板上に修飾DNA分子を片端固定し、流路中の流速を制御することで目的の1分子DNAの形態を制御すると共に、酵素を含む調製溶液を連続的に供給することでリアルタイムにDNAと酵素の相互作用解析を可能にした。ssDNA結合能を持つReplication protein A (RPA) 70kDaサブユニットと黄色蛍光タンパク質の融合タンパク質及び大腸菌RecAのssDNA結合ドメインペプチドを蛍光化合物Atto-488で化学修飾した蛍光ペプチドによるssDNAの可視化技術を開発した。 【今年度の結果】 開発した技術を用いて、DNA合成反応の進行に伴い鋳型ssDNAに結合したRPA-YFP分子が自由端からの解離し、RPA-YFP分子による可視化領域が短くなることを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA合成酵素の1分子計測に成功し、論文および学会での発表を行った。具体的な内容は、RPA-YFPにより標識した鋳型ssDNA分子を流れのON/OFF制御により伸張形態及びランダムコイル形態に制御し、これらのDNA形態がDNA合成酵素Klenow Fragment (3’-5’ exo-)へどの様な影響を与えるのかをDNA合成反応の直接観察により解析を行った。DNA合成反応中の流れをOFFに制御したランダムコイル形態では観測中のみ一時的に緩衝液を流し鋳型ssDNA分子を伸張させた。得られた結果は、DNA合成反応が進むにつれて各形態の鋳型ssDNAに結合していた蛍光RPA分子の自由端からの解離を観察した。また、DNA合成速度は、伸長形態では91 bases/s、ランダムコイル形態では52 bases/sであった。これらの結果より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1分子に着目した直接観察によるDNA合成反応の解析技術を確立した。この技術を用いて各種DNA合成酵素の解析を行い、各種酵素の性質の相違を明らかにしていく。また、DNA合成酵素そのものも蛍光標識することにより、より詳細な性質を明らかにしていく。 DNA合成酵素の蛍光標識法については、蛍光タンパク質との融合タンパク質の調製及びssDNAに結合させたDNA合成酵素と蛍光化合物を架橋する方法を試みている。融合タンパク質の調製は順調に調製出来ており、調製出来た酵素種から順次測定を行っていく。また、DNA合成酵素にはDNA合成ミスを校正するための塩基除去(ヌクレアーゼ)活性を持つ種が多い。このヌクレアーゼ活性を測定するための実験系の確立にも着手する。
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