研究課題
MCF-7ヒト乳癌細胞株,、U2OSヒト骨肉種細胞株、ヒト結腸腺癌細胞株HCT116、マウス繊維芽細胞(MEF)において、エトポシド処理によるKDM7Aの発現誘導を調べたところ、U2OS細胞では 30 uM で48時間処理することにより発現が約10倍上昇するのに対し、その他3種類の細胞では2-4倍程度にとどまることが分かった。U2OS細胞においてKDM7A発現の経時変化を調べたところ24時間でほぼプラトーに達することがわかった。そこで、U2OS細胞を2回siRNA処理し、2回目後早いタイミング(4-6時間以内)でエトポシドを添加すると、24時間暴露後のKDM7Aの誘導が効率よく抑えられ、negative control siRNAに比べ、KDM7Aレベルが25-30%程度に抑えられることを見出した。更に、Annexin V とPI (propidium iodide) を利用してU2OS細胞のアポトーシスアッセイを行ない、エトポシドにより誘導されるアポトーシス細胞集団の割合がKDM7Aをノックダウンすることにより53.7% から37.1%に大きく低下することが確認された。RT-qPCRにより、KDM7Aノックダウン時に既知のp53標的遺伝子の発現誘導が抑えられるか調べたところ、APAF1、ATF3、PLK3、BTG2、MDM2、PCNA、PTP4A1、TP53INP1、POLH、CDC25C、EEF1A1、PPM1D、LTBP1、ITGAMについて誘導抑制を確認した。一方で、CDKN1A(p21)、BAX、PUMAに関しては有為差が認められなかった。このことから、KDM7Aがp53を活性化し、proapoptotic遺伝子を含むp53標的遺伝子のサブセットを誘導し、アポトーシスが促進されると考えられた。
3: やや遅れている
平成25年度中に論文投稿を目標としていたが、本研究者が携わる他のプロジェクトにおける人員交代の影響もあり、当初予定していたほど、本研究に時間を割くことができなかった。
細胞レベルを中心としたKDM7Aの機能解析を進める。U2OS細胞を中心に、KDM7A複合体解析を進める。更に、ストレス応答時におけるKDM7A下流遺伝子プロモーターへのKDM7A、p53のリクルートメント、ヒストン修飾(H3K4、H3K9、H3K27メチル化)の変化を、クロマチン免疫沈降法(ChIP-PCR、ChIP-seq)により調べる。また、p53をノックダウンしたときにKDM7Aを過剰発現させることにより、KDM7Aによるアポトーシス誘導等の効果がp53依存的か検討する。PHDフィンガー、JmjCドメイン変異コンストラクトを用い、これらのドメインの必要性も検討する。また、KDM7Aをノックダウンした細胞株をヌードマウスに皮下移植し、腫瘍形成効率をコントロール細胞株と比較することにより、KDM7Aが生体内環境においても腫瘍形成に重要であるか検討する。
本研究と異なるプロジェクト研究における人員交代等の偶発的要因によりそちらに従事する時間を増やさざるを得ない状況となり、本研究に従事する時間を削らざるを得なくなり、研究の遅れと同時に消耗品、研究成果発表旅費等の使用にも遅れが出た。消耗品、研究成果発表旅費に用いる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Medicinal Chemistry
巻: 56 ページ: 7222-7231
10.1021/jm400624b