本研究課題の目的は、崩壊した複製フォークおよびレプリソームが組換え依存的に再生される仕組みを明らかにすることである。停止したフォークを一本鎖特異的エンドヌクレアーゼ処理すると、レプリソームからGINSが脱落するが、組換え因子Rad51依存的に再結合して複製再開可能となることが過去の研究で分かっている。そこで、GINSの制御に着目して研究を行った。GINSのサブユニットPsf2は、DNA損傷や複製ストレスに応答してATR/ATMによるリン酸化を受けることが知られている。昨年度の研究で、アフリカツメガエル卵抽出液中でPsf2の182番目のセリン(Ser182)がリン酸化されることを明らかにしたので、今年度はPsf22リン酸化変異体を含むGINSを用いて複製活性に与える影響について調べた。 低濃度のアフィディコリンとS1ヌクレアーゼの存在下ではGINSのクロマチン結合の維持と効率的な複製進行にRad51が必要となるが、このときPsf2リン酸化部位をアラニン置換すると野生型やグルタミン酸置換型に比べて複製活性が低下することが分かった。また、オーキシンデグロン法を用いて停止したフォークにおいてGINSを分解誘導すると、複製再開の際には新たにGINSのクロマチン結合が必要となるが、このときPsf2リン酸化変異体では複製再開の活性が低下することが分かった。これらの結果は、レプリソームからGINSが失われてもATR/ATM活性依存的に再結合してレプリソームを再形成できることを示唆している。
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