研究課題/領域番号 |
24770171
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩 久留米大学, 分子生命科学研究所, 助教 (00421313)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | セントロメア / ダイセントリック染色体 / 分裂酵母 / 動原体 |
研究概要 |
本申請研究ではモデル生物である分裂酵母を用いて実験を計画し、研究目的の「セントロメア不活性化の抑制機構の解明」に焦点を絞って解析を行っています。方法としてダイセントリック染色体が形成された際にセントロメアの不活性化が促進される変異体をスクリーニングし、その変異した原因遺伝子を同定することで、セントロメア不活性化抑制機構に関わる因子が同定可能であると考えました。本研究ではセントロメア不活性化の調節制御機構に関わる因子の解明を試みる目的で、主に遺伝子を破壊しても細胞が生存可能な非必須遺伝子を中心に解析を計画しました。 この実験計画を遂行するために、平成24年度は申請者開発のダイセントリック作成用株の改変とその株を用いた非必須遺伝子破壊株ライブラリーの作成を実施する予定でした。しかし、非必須遺伝子破壊株ライブラリーの作成に使用する、申請者開発のダイセントリック作成用株において、後の解析をよりスムーズにより確実に遂行するにあたり、想定していた以上の改変を行わなければいけないことが判明しました。その株の問題点の一つは、部位特異的酵素Creの発現、抑制の調節が不完全であったことでした。このため破壊株ライブラリー作成時にすでに酵素が発現し、細胞の死やダイセントリック染色体誘導時の野生株と変異株の間で生育の違いが見分けにくく解析にあまり適していませんでした。そこで、発現調節のプロモーター配列の改変や、Cre/loxPの部位特異的組換え酵素も、より調節のしやすいシステムに変換しました。この株の大幅な改変と条件検討によって、より扱いやすく、より制御の効くダイセントリック染色体作成が可能な実験株が構築できました。この改変作業に時間がかかったため、研究計画に予定していたライブラリー作成までは達成できませんでした。しかし、今回作成した新たな株により、より効率な今後の研究遂行が可能になりました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績概要に述べたように、ダイセントリック染色体作成のための菌株の大幅な改変を行う必要が生じたため、その作成および条件検討に計画以上に時間を要しました。そのため、平成24年度予定していたダイセントリック染色体が誘導できる株におけるライブラリーの作成までは到達できませんでした。しかしながら、今回作成した株は、遺伝子発現制御のためのプロモーターや部位特異的酵素、選択マーカー遺伝子を改変する事で、元の株と比べダイセントリック染色体の形成のための組み換えの制御がより正確に行えることから、今後の研究遂行の上で様々な利点を持つ利用価値および汎用性の高い株であることが分かりました。この株を使用する事により、これからの実験の信頼性向上とスピードアップが可能になるため、今の目的達成度の遅れは今後挽回可能であると考えています
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、上記のように平成24年度にできなかった、ダイセントリック誘導株において、ランダム変異導入法を用いた、遺伝子破壊株ライブラリーの作成を行います。そしてこれら変異株を用いダイセントリック染色体の形成と生存率の解析を行い、ダイセントリック染色体におけるセントロメア不活性化頻度の上昇する変異体の分離を試みます。次に、単離されたセントロメア不活性化頻度の上昇する破壊株の破壊された遺伝子の同定を行います。破壊遺伝子の同定は、破壊に使用したマーカー遺伝子の挿入部分をインバースPCRやテイルPCRなどによって調べることにより行います。非必須遺伝子ams2は、これまでの申請者の実験から遺伝子破壊株においてセントロメア不活性化が促進されることが示されています。故に、実験系がうまく機能するかのポジティブコントロールとして、ams2が選択されるかどうかで確認できると考えています。 さらに並行して今回作成した新たな株において可能になった、市販の変異株ライブラリーに掛け合わせによりダイセントリック形成能を持たせた変異株を作製し、同様のダイセントリック形成実験を行い生育の変化を観察します。また、非必須遺伝子だけでなく、必須遺伝子を含む動原体の他の遺伝子の解析も考えています。これまでの解析から動原体の構造等に関わる4つの遺伝子において、ダイセントリック染色体におけるセントロメアの不活性化促進が示されました。動原体は複数のコンプレックスからなる数十のタンパク質により構成される複合体であるので、微小管結合部位やパッセンジャーコンプレックスといった新たな動原体の複合体タンパク質の破壊株や遺伝子変異株を用いセントロメア不活性化を調べることで、異なった角度からの解析を行うことを考えています。分裂酵母においては、動原体の必須遺伝子の温度感受性変異体が多数とられており、これらが使用可能と考えられます。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|