本申請研究はモデル生物である分裂酵母を用いて「セントロメア不活性化の抑制機構の解明」に焦点を絞って解析を行った。方法として一つの染色体上に2つのセントロメアが存在するダイセントリック染色体が形成された際に、セントロメアの不活性化が促進される変異体のスクリーニングを試みた。その変異した原因遺伝子を同定することで、セントロメア不活性化抑制機構に関わる因子が同定できると考えた。 前年度までに申請者開発のダイセントリック誘導株を改変することで、本研究のスクリーニングに使用可能な分裂酵母株を作製した。そして、分裂酵母非必須遺伝子破壊ライブラリーを使ってダイセントリック染色体誘導株による遺伝子スクリーニングを行い、8株のダイセントリック細胞の生存率が上昇する株と、9株の生存率が減少する株を得た。 平成26年度は、前年度までに選別できたダイセントリック染色体が形成された際に生存率が上昇する変異株において、さらに詳細な解析により5株を選別した。そして、それらのダイセントリック染色体生存株で、染色体やセントロメアのどのような変化が細胞の生存に寄与するのか解析を行った。パルスフィールドゲル電気泳動法を用いた染色体の核型変化を基に解析を行った結果、セントロメアのエピジェネティックな不活性化により、機能的セントロメアが一つになり、染色体が安定化した細胞の割合が最も多いことが分かった。よって、これらの遺伝子破壊株においてセントロメアは不活性化しやすくなっていることが示唆される。これらの遺伝子はヒストンの修飾に関連するタンパク質をコードしていることから、ヒストンの修飾が不活性化抑制機構に関与している可能性が考えられる。より詳細なヒストン修飾とクロマチン構造の変化等の解析を進め、不活性化抑制の機構をまとめる予定である。
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