研究課題/領域番号 |
24770173
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
北島 智也 独立行政法人理化学研究所, 染色体分配研究チーム, チームリーダー (00376641)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 染色体 / 動原体 / ライブイメージング / 卵母細胞 |
研究概要 |
本研究では、減数第一分裂と第二分裂の遷移期間において、姉妹動原体の解離と紡錘体形成のメカニズムを理解することを目指している。 1.高解像度ライブイメージングと定量的画像解析による、姉妹動原体が解離するタイミングとキネティクスの正確な計測 - まず、以前に確立したマウス卵母細胞のライブイメージング技術を用い、減数第一分裂後に姉妹動原体が解離する過程を撮影した。動原体と染色体をイメージングし、動原体の三次元トラッキングを行い、姉妹動原体ペア間の距離の変化を計測した。この解析から、姉妹動原体ペア間の距離が離れるタイミングは、第一分裂後期の開始と一致することを明らかにした。この実験から、減数第一分裂から第二分裂までの間に姉妹動原体ペアを解離させるシグナルは、第一分裂後期を開始させるシグナルと同一のものであることが示唆された。 2.姉妹動原体を解離させる実行因子について - そこで、姉妹動原体ペアを解離させる実行因子の候補として、染色体接着因子Rec8コヒーシンを第一分裂後期に分解するプロテアーゼであるセパレースを挙げた。Rec8のセパレース標的配列をベースにセパレース活性を測るバイオセンサーを開発した。このセンサーは、動原体で第一分裂後期で効率的に分解されるが、インナーセントロメアではその分解効率が著しく下がることが分かった。これらの結果は、姉妹動原体を解離させる実行因子がセパレースである考えと一致する。 3.第一分裂の紡錘体崩壊から第二分裂の紡錘体形成までのタイミングとキネティクスの計測 - 微小管マーカーを用いて減数第一分裂から第二分裂までをライブイメージングした。紡錘体を三次元構築し、その形状変化をパラメター化する系を確立した。今後、姉妹動原体ペアの解離が第二分裂の紡錘体形成を促進する可能性について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで年次計画のとおりに、1.高解像度ライブイメージングと定量的画像解析による、姉妹動原体ペアが解離するタイミングの正確な計測、2.姉妹動原体ペアを解離させる実行因子の候補として、動原体におけるセパレース活性の測定、3.減数第一分裂の紡錘体崩壊から第二分裂の紡錘体形成までのイメージングと計測系の開発、を達成しており、おおむね順調に進展していると自己評価できる。年次計画にあったもののうち、達成できなかった点は以下のとおりである。 1.姉妹動原体ペアの解離のキネティクスの測定 - 姉妹動原体ペアが解離することによる姉妹動原体間の最大距離は1.5um程度であり、それが少なくとも1分以内に完結することが分かった。この変化のキネティクスを計測するには、実施した解像度が空間的にも時間的にも十分ではなかった。ただし、姉妹動原体ペアの解離のタイミングが第一分裂後期のそれと一致するという結果を得たことで、本実験の主要な目的は達成したと考えている。 2.姉妹動原体ペアの解離を強制的に抑える系の開発 - 計画ではシュゴシンを動原体に強制的に局在させることで、セパレースによる姉妹動原体ペアの解離を抑えられる系を開発する予定であった。24年度において、動原体にシュゴシンを強制的に局在させたものの、動原体におけるセパレース活性センサーの分解が抑えられるという結果をいまだ得ていない。しかしながら、セパレース活性センサーが内在性シュゴシンの局在するインナーセントロメアで分解効率が低いことを示したことから、条件検討の価値があると考えている。 3.第一分裂の紡錘体崩壊と第二分裂の紡錘体形成の定量的計測 - 計画では第一分裂から第二分裂までの紡錘体の形状変化の計測を完了している予定であったが、実際には、紡錘体のイメージングとその形状のパラメター化の系を確立した。これにより、定量的計測を行う技術は完備されている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度において得られた結果を受け、今後はまず、姉妹動原体ペアの解離の実行因子がセパレースである可能性について追求していく。Rec8をベースにしたセパレース活性バイオセンサーを用い、これまで動原体で分解効率が高く、インナーセントロメアで分解効率が低いという結果を得ている。まず、インナーセントロメアにおける分解効率の低さが、シュゴシンに依存したものであるかを確認したい。シュゴシンSgo2のノックアウトマウスの供与を受け、このマウスから得た卵母細胞において、インナーセントロメアでの分解効率を調べる。インナーセントロメアで分解効率がシュゴシンに依存するという結果を得ることで、本研究で開発したRec8ベースのバイオセンサーが、内在性コヒーシンの分解効率を反映するものであることが強く支持されるだろう。 また、姉妹動原体ペアの解離を強制的に抑える系の開発を継続する。25年度にはMP1とp14という強い結合親和性を持つタンパク質を姉妹動原体に局在させ、姉妹動原体ペアの解離を人工的に抑えることを計画している。さらに、培地操作により細胞内の活性をコントロールできるNS3プロテアーゼを用いて、MP1とp14による姉妹動原体ペアの結合をキャンセルできる系を開発する予定である。これにより姉妹動原体ペアの解離を第一分裂後期で特異的に抑制し、それが第二分裂の紡錘体形成にもたらす影響について解析したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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