研究課題/領域番号 |
24770174
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 雅裕 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30467617)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生物物理 / 細胞生物学 |
研究概要 |
本研究では1細胞内の温度を高い時間・空間分解能で可視化する技術を開発し、これまで不可能であった細胞内熱産生を直接可視化することを目的としている。そのために以下の3つの課題を遂行する。1)蛍光性温度センサータンパク質の改良・開発、2)細胞の熱産生の可視化、3)神経細胞の発火に伴う熱産生の定量化(ジュール熱仮説の検証)、本年度は主に項目1と2について研究を行った。 1)レシオメトリックな蛍光性温度プローブを大腸菌からタンパク質を精製し、温度に対する蛍光のレシオ変化率を測定した。その結果、多くの生物種の至適温度である30℃から40℃の範囲において約40%の蛍光レシオ変化率を観測した。また20℃から50℃に対する温度変化に対する繰り返し性も確認した。以上より細胞内温度変化・熱産生を可視化する遺伝子にコードされた蛍光性温度プローブの作製に成功した。 2)作製した温度プローブをHeLa細胞などの株化培養細胞の細胞質、ミトコンドリア、核、及び細胞膜に発現させる系を構築し局在を確認した。これにより1細胞内の細胞内小器官局所的な温度変化や熱産生が可視化できるようになった。更に本プローブを株化培養細胞のミトコンドリア内に発現させ脱共役剤であるFCCPを加えたところ、蛍光レシオ値の変化からミトコンドリア内の温度が上昇していることが示された。他の研究でFCCP添加によるミトコンドリア周辺の温度上昇が報告されているが、実際に1細胞ミトコンドリア内の温度上昇の直接可視化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TRPチャネルタンパク質を基にした蛍光性温度プローブの開発は遅れているが、別の方法を用いた温度プローブについては30℃から40℃の間で約40%の変化量を示した。また本センサーをミトコンドリア、核、細胞膜などの細胞内小器官に発現することに成功した。これにより細胞内小器官局所的な温度変化、熱産生を可視化できる基盤ができた。
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今後の研究の推進方策 |
作製したプローブを用いて脱共役剤添加などによる脱共役時の熱産生の可視化、膜電位と熱産生の関係、及び神経細胞の発火によるジュール熱仮説の検証を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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