研究課題/領域番号 |
24770175
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水野 裕昭 東北大学, 生命科学研究科, 研究支援者 (00620204)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アクチン / 細胞骨格 / フォルミン / コフィリン |
研究概要 |
細胞内でアクチンは、アクチン結合蛋白質と共に様々な高次アクチン構造体を形成する。だが、どのようにしてアクチン構造体が同一空間で棲み分けながら構築されるのかについては未だ明らかになっていない。哺乳動物フォルミンmDia1は、アクチン線維の反やじり端に結合したまま、線維構造に沿って回転(螺旋回転)しながら線維を伸張する。先行研究において私は、ガラス上に固定したmDia1から伸張しているアクチン線維のやじり端側を固定することで、mDia1の螺旋回転が線維のねじれを緩める機構を見出した。本研究ではmDia1の螺旋回転によってねじれを緩めた時の、線維の寿命やアクチン結合蛋白質の結合特異性を解析し、アクチン構造の棲み分けの原理を解明することを試みた。 まず、アクチン脱重合因子コフィリンによるアクチン線維切断の頻度を全反射顕微鏡を用いて計測した。その結果、mDia1によってねじれが緩められたアクチン線維は、自発的に伸張した線維よりも4倍、やじり端側が固定されること無くmDia1によって伸張された線維よりも2倍程度の切断抵抗性を示した。またコフィリンは、自発的に伸張した線維と比べて1/2程度しか、mDia1によってねじれが緩められた線維に結合しなかった。 加えて、N末端側にRho結合領域を持つmDia1の活性化体を発現させた細胞内のアクチン線維の寿命は、コントロール細胞やmDia1全長を発現させた細胞内の寿命に比べて2倍程度長くなった。さらに、mDia1の活性化体を発現させた細胞内でのコフィリンの結合量が減少することも見出した。これらの結果は、mDia1の螺旋回転は、アクチン線維の2重螺旋構造を緩め、コフィリンの結合を抑制し、コフィリンの機能を抑制することを示している。これらの結果は、アクチン構造体の細胞内での棲み分けが、アクチン線維の微細な構造変化によって調節されている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に記載した全反射顕微鏡を用いたアクチン結合蛋白質の結合や機能の解析は、実績報告にも記載したように、アクチン脱重合因子コフィリンの結合や機能がmDia1の螺旋回転によって抑制されていることが示され、達成できたと考えられる。また、細胞内でのアクチン繊維のターンオーバーやアクチン結合蛋白質の結合についても、活性化型mDia1を発現させた細胞内でのアクチン繊維の寿命がコントロールに比べ長くなり、コフィリンの結合量が減少することが示され、達成できたと考えられる。 しかしながら、研究計画に記載していたアクチン結合蛋白質の結合によるアクチン線維の2重螺旋構造の変化の可視化と、生理的外来刺激により誘導された高次アクチン構造体内の線維の動的構造変化の可視化は達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は達成できていない研究計画(アクチン結合蛋白質の結合によるアクチン線維の2重螺旋構造の変化の可視化と、生理的外来刺激により誘導された高次アクチン構造体内の線維の動的構造変化の可視化)を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて研究を続けていく。 まずアクチン結合タンパク質を結合させた線維や、基板に固定されたmDia1から伸張するアクチン線維や、mDia1から伸張する線維のやじり端が固定された時の線維構造をTEMを用いて明らかにしていく。さらに、3次元トモグラフィー法を用いて、mDia1を発現させた細胞内や生理的外来刺激により誘導された高次アクチン構造体内の線維構造を明らかにしていく。 また、達成できた研究計画についても、コフィリン以外のアクチン結合蛋白質での研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて研究を続けていくため、グリッド、試薬等の消耗品を購入する。また、蛍光顕微鏡を用いた細胞内・外での研究を進めるために試薬等を購入する。
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