細胞質分裂に必須な収縮環は、筋肉と同様にアクチン繊維とII型ミオシンから構成されるが、形成や維持、および収縮における分子機構の詳細は不明のままである。本研究では分裂酵母の収縮環におけるアクチン繊維とII型ミオシンの相互作用を精細に観察することで、収縮環アクトミオシン相互作用様式の解明に迫る。 平成26年度の主な研究成果: (1) Rng2のアクチン結合ドメイン (Rng2CHD)の機能解析。Rng2は分裂酵母の細胞質分裂に必須なアクチン調節タンパク質 (IQGAPホモログ)である。前年度から引き続きRng2CHDとアクチン繊維の相互作用、およびII型ミオシンのモーター活性に対する作用を、共同研究者と共に生物物理学的に解析中である。Rng2CHDはアクチン繊維のピッチを変化させること、およびII型ミオシンのATPase活性を抑制的に制御すること等、着実に新たな知見が得られつつある。 (2)Rng2類似遺伝子の解析。Rng2CHDと相同な配列を持つ遺伝子の機能解析を行った結果、予想に反して減数分裂後の胞子形成過程に関与していることが明らかになった。これらの成果を細胞生物学の国際誌上で論文として公表した。 (3)単量体型II型ミオシンMyo3の機能解析。収縮環におけるアクトミオシン相互作用をより直接的に解析するため、モーター活性を様々に変化させた変異型Myo3株を作製し、機能や局在を解析した。Myo3のモーター特性はMyo3の収縮環への局在量に関連していること、またもう一つのII型ミオシンMyo2と協調して分裂期後期の収縮環の維持に関与していることが判明した。これらの成果を論文にまとめて国際誌に投稿し、現在編集者の指示に従って改訂中である。
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