研究課題/領域番号 |
24770180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丹野 悠司 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (20583123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 染色体分配 / セントロメア |
研究概要 |
細胞分裂時における染色体の均等分配は、遺伝情報の正確な継承に不可欠である。染色体接着保護因子Sgo1は分裂期においてセントロメアへと局在化し、姉妹染色分体の接着維持を通じて均等分配に必須の役割を果たす。これまで、Sgo1の発現抑制による染色体分配異常や、腫瘍形成の促進が報告されている。しかしながら、Sgo1の制御機構については未解明の点が多い。分裂期キナーゼAurora Bは、その活性を通じてSgo1の局在を制御することが知られているものの、基質を含めた分子機構については不明である。その分子機構を明らかにするために、Aurora BがSgo1を直接的にリン酸化することでセントロメア局在を促進する可能性について検討した。in vitroにおいてリン酸化アッセイを行った結果、Sgo1はAurora Bのよい基質となることを見出した。報告されているAurora Bの標的配列をもとに、種々のSgo1の非リン酸化型変異体を作製した結果、主要なリン酸化部位の同定に至った。同定されたリン酸化部位に対する抗リン酸化特異的抗体を用いた解析から、in vitroにおいて見出されたリン酸化部位は細胞内においても実際にリン酸化されていることが確認された。非リン酸化型のアラニン置換変異体の細胞内局在を観察するため、GFP標識を行った野生型および変異型Sgo1をHeLa細胞に発現した結果、興味深いことに変異型Sgo1が局在異常を示すことが明らかとなった。また、変異型Sgo1発現細胞は染色体維持機能が弱まっていること、また、染色体分配異常を高頻度に示すことが明らかとなった。以上より、Aurora BによるSgo1の直接的なリン酸化が、Sgo1のセントロメア局在および適切な染色体分配を促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、Sgo1の局在制御機構を解明する上で最も重要な課題であったAurora Bの基質 (Sgo1自身)およびそのリン酸化部位の同定にいたった。また、in vitroで同定されたリン酸化部位が実際に細胞内でもリン酸化されていることを確認した。さらに、非リン酸化型変異体の解析により、同定されたリン酸化部位がSgo1のセントロメア局在に必要であることも示すことができた。現在は、Sgo1とそのセントロメアにおける足場となるタンパク質との相互作用に関して、リン酸化が結合を促進する可能性について検討を行っている。研究は計画通りに進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従いSgo1のリン酸化が足場タンパク質との相互作用を促進する。 はじめに、Sgo1および既知のインナーセントロメアタンパク質のリコンビナントタンパク質を大腸菌から精製する。それぞれの因子についてin vitroリン酸化反応を行い、Aurora Bの基質を決定する。つづいて、決定された基質のAurora Bによるリン酸化が、Sgo1との相互作用を促進する可能性についてin vitro プルダウンアッセイにより検討を行う。Sgo1が基質であった場合、他のインナーセントロメアタンパク質とのプルダウンアッセイを行う。Aurora Bによるリン酸化が相互作用を促進する結果が見られた場合には、リン酸化部位の同定を行い、非リン酸化型変異体では相互作用の促進が起こらないことを確認する。また、相互作用の解析は、酵母ツーハイブリッド法によっても行い、基質分子の非リン酸化型変異体による相互作用の減少及びリン酸化模倣型タンパク質による相互作用の増大が見られるかについての検討を行う。次に、上記の解析において見られた相互作用の促進 機構が細胞内でも同様に起きているかを検討する。Aurora B阻害剤あり/なしの細胞抽出液を用いてSgo1の免疫沈降を行い、ウェスタンブロッティングにより共沈降物に相互作用因子が含まれているかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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