研究課題
オートファジーは真核生物が普遍的に備えるタンパク質分解機構の1つであり、二重膜構造体・オートファゴソームの新生を伴う非常にダイナミックな膜動態から成り立っている。本研究では、オートファジー必須因子の中で唯一の膜タンパク質であるAtg9に焦点を当て、Atg9構造体(Atg9ベシクル)の動態および組成について解析を行った。本研究の解析により、Atg9ベシクルは直径50 nm程度の単膜ベシクルであること、オートファジーの誘導(栄養飢餓)に伴って液胞近傍のPASに集積し、最終的にオートファゴソーム膜の一部になっていくことなどが明らかとなり、これらの成果については、J. Cell Biol.誌に掲載された(J. Cell Biol., 198, 219-233, 2012)。次に、Atg9ベシクルのタンパク質組成を明らかにするため、FLAGタグおよびBiotinタグを用いた2段階精製によりAtg9ベシクルを単離・精製し、プロテオーム解析を行った。その結果、Atg9ベシクルの主要構成因子がAtg9およびAtg27であることが明らかとなり、このことはAtg9ベシクルが他の分泌ベシクルとは異なり、オートファゴソーム形成に特化した機能を持つベシクルであることを示唆している。さらに我々は、Atg9ベシクルの構成因子としてYpt1およびTrs85を同定しており、こららの因子がオートファゴソーム形成の後期ステップに関与することを明らかにした。これらの成果については、J. Biol. Chem.誌に掲載された(J. Biol. Chem., 287, 44261-44269, 2012)。Atg9ベシクルとオートファゴソーム膜の組成比較を行うため、オートファゴソーム膜の単離・精製を行った。すでに、プロテオーム解析に必要な量の精製標品が得られており、質量解析によるタンパク質同定を行っている。
2: おおむね順調に進展している
Atg9ベシクルの動態および組成についてそれぞれ学術雑誌に報告しており、これらの点については交付申請書に記載した研究計画が十分以上に達成されている。また、オートファゴソーム膜のプロテオーム解析についても、すでに精製標品が得られており、研究計画に合わせて順調に進んでいる。また、質量解析装置の都合により、次年度の予定であったAtg9のリン酸化解析についてもすでに進めており、複数のリン酸化部位が同定されている。これらを総合的に考えると、研究計画の達成度については「おおむね順調に進展している」と言える。
オートファゴソーム膜のプロテオーム解析の結果をもとに、Atg9ベシクルとの組成比較や、変異体解析などを行う。また、次年度予定であったAtg9のリン酸化解析については、すでに計画を前倒しして進めているので、申請書に記載した内容についても前倒しで早めに進めていく予定である。計画の内容としては、Atg9リン酸化部位の変異体解析が中心となり、in vitro融合反応などの生化学的手法や、蛍光顕微鏡・電子顕微鏡解析が中心となる。
該当なし
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