研究課題
胎生期から生後発達期にかけての脳組織でみられるニューロンやグリア細胞の分裂、移動、突起伸展などの現象には微小管やアクチン細胞骨格系による細胞形態と運動の制御が不可欠である。一方、重合性ヌクレオチド結合蛋白質ファミリーSEPT1-14から成るセプチン細胞骨格系も神経系に大量に存在するが、その生理的意義には不明な点が多い。申請者が所属する木下研究室はこれまでに、セプチンがアクチン系やリン脂質2重膜と相互作用しつつ多様な形状に高次集合するユニークな活性を持ち、細胞分裂と分裂後の多様な細胞現象に関与することを示してきた。神経系においては大脳皮質形成時の細胞移動や培養ニューロンのスパイン形成におけるセプチン細胞骨格系の関与がRNAi実験から示唆されている。しかし、セプチン遺伝子破壊マウスの多くが胎生致死となるか軽微な異常しか示さないことも災いして、非分裂細胞におけるセプチン細胞骨格系の機能解析は十分になされていない。そこで申請者は神経突起伸展制御機構と樹状突起棘(スパイン)内CaMキナーゼシグナル伝達経路研究の経験を生かし(J Neurosci 2009; Neuron 2007)、神経突起伸展におけるセプチン機能を詳細に解析し、以下結果を得た(Nature Communications 2013)。・SEPT7欠乏ニューロンにおいて、軸索と樹状突起伸展が阻害されている。・動的に安定な微小管の指標となるアセチル化チューブリンの量がSEPT7の欠乏によって変動する。・SEPT7欠乏ニューロンにおいてチューブリンのターンオーバーが減弱する。・セプチンは脱アセチル化酵素HDAC6と直接相互作用する。・HDAC6とセプチンの結合がHDAC6と基質であるチューブリンとの結合を制御する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
Nature Communications
巻: 4 ページ: 2532
10.1038/ncomms3532.
Molecular brain
巻: 6 ページ: 35
10.1186/1756-6606-6-35.