研究課題
mRNAの新規小胞体標的化機構の分子メカニズムを明らかにするために、『ショウジョウバエ培養細胞において機能するRNAのイメージングシステムの構築』及び『ショウジョウバエ培養細胞を材料とし超遠心分画法及びRNA-seq解析によるシグナル認識粒子(signal recognition particle: SRP)非依存的に小胞体へ標的化するmRNAの網羅的な同定』を行なった。構築したRNAイメージングシステムを用い、SRP依存的に小胞体へ標的化される分泌タンパク質をコードするVm34Ca mRNAを可視化したところ、ドット状のシグナルを確認した。一方で、細胞質タンパク質をコードしシグナル配列を持たないsmt3 mRNAではドット形成の頻度はVm34Ca mRNAに比べ有意に低かった。更に、このドット形成はシグナル配列の除去、SRP依存的標的化において必須であるSRP54kのノックダウンにより、smt3 mRNAと同程度まで低下したことから、構築したイメージングシステムによりRNAを可視化できたと判断した。このシステムを用い、RNA-seq解析により同定したmRNAの一つであり、核内で働く転写促進因子であるyorkie(yki) mRNAを可視化したところ、Vm34Ca mRNAと同程度の頻度でドット形成が見られた。yki遺伝子にはシグナル配列が存在せず、またyki mRNAに由来するドットの形成頻度はSRP54kノックダウンにより影響されないことから、yki mRNAはSRP非依存的に小胞体へ標的化することが強く示唆された。更に、このドット形成は3'UTR依存的に起こること、yki 3'UTRをsmt3 mRNAに連結するとVm34Ca mRNAと同程度までドット形成頻度が上昇することから、yki 3'UTRがドット形成に必要十分であることが明らかになった。
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