研究課題
分泌蛋白質Wntは胎生期肺において上皮管腔組織の分岐形態形成及び細胞分化に必須であることが知られているが、その調節機構は不明である。Wntシグナルは運動細胞や神経細胞において細胞極性を制御することが知られているが、管腔構造を構成する上皮細胞の頂底極性に対する役割及び分岐形態形成における役割は不明である。本研究ではこの点に着目し解析を行った。1)beta-catenin依存性・非依存性の両経路が管腔形成に与える影響を明らかにする:形態形成におけるWntシグナルの役割を明らかにするため、上皮組織を単離してマトリゲル基質内で培養する上皮単独培養を確立し、beta-catenin依存性・非依存性を制御するリガンド(それぞれWnt3aとWnt5a)をレンチウィルスにて導入した。その結果、Wnt3aを導入した場合においてのみ、気管支遠位マーカーSOX9の発現上昇と近位マーカーSOX2の発現減少が確認され、分岐形態形成が促進した。beta-catenin依存性経路を活性化するagonist(CHIR99021)においても同様の結果を得た。2)上皮管腔における増殖細胞の分布をどのように調節するかを明らかにする:Wntシグナルは増殖細胞の組織内分布を制御し分岐形態形成を制御しているのではないかと考え、Eduの取り込み実験、pHistonH3染色を用いて増殖細胞を検出したが、組織内分布に関して一定の傾向を得られなかった。3)Wntシグナルが上皮細胞の頂底極性が増殖とどのように関与し、管腔組織の分岐や伸長を制御しているのかを明らかにする:Wnt3aやWntシグナルのagonistを加え、Wntシグナルを活性化した場合、1)頂底極性制御因子aPKCzetaの頂端膜への局在、2)頂底方向への細胞伸長を促進した。またaPKCzeta阻害剤はWnt活性化依存性の分岐形態形成及び細胞伸長を抑制した。
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