研究課題/領域番号 |
24770187
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
淺川 東彦 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (70399533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 核膜 / 核膜孔 / 核膜孔複合体 / 分裂酵母 / 減数分裂 |
研究概要 |
高等真核生物では分裂期に起こる核膜崩壊によって核膜と核膜孔複合体(NPC)が分散し、核と細胞質が均一化する。分裂酵母では核膜やNPCの構造を維持しながらも核膜透過性が増大し、機能的に核膜崩壊と同じ効果をもたらす現象が起きる(ヴァーチャルな核膜崩壊:V-NEBD)。V-NEBDを促進する機構としてRanGAP1蛋白質が核へ移行することが明らかになっているが、その機構は明らかではない。本研究では、核膜孔を構成するNPCの機能がRanGAP1の核移行に関与する可能性を検討した。NPCを形成する約30種類の蛋白質(ヌクレオポリン)のうち、細胞の生育に必須ではないものについて遺伝子欠失変異体を作製し、減数分裂過程を生細胞観察した。核蛋白質のマーカーとして、核移行シグナルを付加したGFP(GFP-NLS)の挙動を観察した結果、nup132遺伝子を欠損した細胞ではV-NEBDが通常とは異なるタイミングで起こることがわかった。Nup132蛋白質は進化的に保存されたヌクレオポリンの一種であるがV-NEBDとの関係だけでなく分裂酵母における機能も明らかではないことから、Nup132についての解析を進め、以下の結果を得た。1)野生型細胞でのNup132の発現量が他のヌクレオポリンと比べて顕著に高いことがわかった。2)V-NEBDは胞子形成と強い関連があるが、Nup132欠損株では胞子形成過程の異常が見られた。3)野生型では核膜上に均一に分布するNPCが、Nup132欠損細胞では栄養源の枯渇とともに偏った分布を示すことがわかった。これらの結果はNup132が核-細胞質間輸送に関する機能だけではなく、核の構造を維持する何らかの機能をもち、その調節がV-NEBDや胞子形成にも重要な役割を果たす可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
V-NEBDの分子機構を知る手がかりとしてNPCに注目し、NPCを構成するヌクレオポリンの一つがV-NEBDに関与する可能性を見いだした点で、大きな進展があった。本研究で見いだしたヌクレオポリンは核構造構築にも関わる重要な因子であり、今後の研究の発展が期待できる。RanGAP1を中心とした解析は成果がなかったものの、総合的に見て研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きNup132の機能解析を進め、V-NEBDとの関係を明らかにする。具体的には、Nup132と相互作用する因子を検索する。また、V-NEBDに前後してNup132自身が翻訳後修飾を受ける可能性を生化学的に調べる。遺伝子破壊株では核膜孔複合体の分布に異常が見られることから、Nup132の機能調節によって核構造が変化した結果V-NEBDが起きる可能性があることから、Nup132破壊株でどのような核構造関連蛋白質の局在や動態が影響を受けるのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額が異なったが、研究計画に変更はない。繰越金はすべて次年度の物品費に追加し、試薬・プラスチック器具・ガラス器具の購入に充てる。新たな設備備品は購入しない。旅費、人件費、その他の費用については、研究計画調書の通りとする。
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