研究課題/領域番号 |
24770188
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
赤沼 啓志 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50450721)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ライブイメージング / 形 / 確率 / 数理モデル / 非対称分裂 / 国際研究者交流 / オランダ |
研究概要 |
均一な細胞集団内においても細胞の形はばらつく。しかし、たまたま起きる形の違いの生物学的な意義は、これまで充分に検証されてこなかった。そこで本研究では、偶然生じる形のばらつきが細胞挙動に与える影響に注目して研究を行っている。ゼブラフィッシュ胚のV2介在神経前駆細胞(V2細胞)は、非対称分裂により二つのサブタイプ(V2a、V2b)を形成する。V2細胞で蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変ゼブラフィッシュのタイムラプス観察から、研究代表者は、まずV2細胞の形と振る舞いには以下の特徴があることを見出した。 1、細胞の長軸方向の一端が尖がっていると、およそ半数の細胞は、長軸方向に沿って分裂する。2、この傾向は、細胞の長軸が長くなるほど顕著になる。3、分裂軸の片側が尖がっていると、尖がっている側の娘細胞の約6割がV2aの運命を選択する。 このV2細胞の形と偏った振る舞いの関係をさらに解析するため、我々は超短パルスレーザー照射によって生じる微小空間での衝撃波を用いて人為的にV2細胞の形を変形させる技術を開発した。この技術を用いて変形したV2細胞は、変形後の形に従って上記の特徴を持った挙動を示した。また、薬剤処理によって細胞の形を変えても同様の結果が得られたこともあわせて、細胞の形が分裂方向と娘細胞間の運命選択を確率論的に制御すると考えられた。 そこで現在、我々は、このシステムの動作原理を明らかにすることを目的に、cellular Pottsモデルを用いた三次元コンピュータシミュレーションで上記三つの特徴を持ったV2細胞の挙動を再現することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書では、平成24年度は、「V2細胞の形と、分裂方向、及び娘細胞間のV2a/bの選択の仕方」と「人為的にV2細胞の形を変形させると、分裂方向、及び娘細胞間のV2a/bの選択の傾向の変化」の二点について解析する計画であった。これらの実験に関しては、「現在までの達成度」で述べたように、予定通り遂行し、十分な成果を得られたと考えている。さらに本年度は、平成25年度に予定していた「V2細胞の形から、分裂方向、及び娘細胞間のV2a/bの選択の傾向の再現」のための実験を前倒して開始しており、すでに数理モデルの構築とコンピュータシミュレーションによる解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コンピュータシミュレーションによる解析を進め、in silicoでの結果とin vivoでの観察結果との整合性を取るべく、数理モデルの修正とパラメータの調整を行う。また、数理モデルの構築のために、さらにin vivoでの実験結果が必要となることも予想されるが、その場合は、必要に応じてタイムラプス観察データやマニピュレーション実験を追加する。 同時に、年度内での国内外での学会発表、及び論文投稿を予定しており、それらを通して研究成果の社会への発信を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料を処理する薬剤や染色用の試薬が当初の予定よりも少ない研究費で賄えたため、未使用額が生じた。翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画は、以下の通りである。 平成25年度も引き続き、実験に用いるゼブラフィッシュを維持するための費用が必要となる。また、追加実験のための試薬やシミュレーションデータの解析に必要となるソフトウェアの購入費に本研究費をあてる予定である。さらには、国内外で行われる学会等への参加や共同研究者との打ち合わせにかかる費用や論文発表のための費用に使用する
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