ミトコンドリアは,分裂と融合を繰り返しながらダイナミックにその形態を変化させる。形態変化の生理的な意義はよく分かっていないが,これに関わる因子の一部は神経変性疾患の原因因子としても同定されていることから,ミトコンドリアの形態維持機構は解明すべき急務の課題である。 私たちはこれまでに,蛍光顕微鏡を用いた観察から,サイトゾルの必須AAAシャペロンであるCdc48pが,ミトコンドリアの正常な形態形成に必須であることを見いだした。さらに,Cdc48pの機能欠損がミトコンドリア形態に与える影響を詳細に調べるため,生理学研究所との共同研究によって,SEM連続断面観察を行った。この手法によって,細胞内の微細構造を3次元的に観察できる。その結果,Cdc48pの機能欠損によって,断片化したミトコンドリアが細胞の一部に集まっているが,それぞれ独立していることがわかった。したがって,Cdc48pはミトコンドリア同士の近接には不要だが,それに続く膜融合反応に必要であると考えられる。 Cdc48pは,様々なアダプタータンパク質によって,その機能が制御されていると考えられている。ミトコンドリアに関連するアダプタータンパク質として,Vms1pがこれまでに同定されていた。しかし,出芽酵母Vms1p欠損株では,ミトコンドリア形態は正常であったことから,他のアダプター因子が関与していることが示唆された。そこで,Cdc48pのアダプタータンパク質を検索したところ,Shp1pおよびUbx2pの欠損株において,ミトコンドリア形態異常が観察された。
|