タンパク質リン酸化はキナーゼによって担われる修飾で、あらゆる生命現象の調節に働く。キナーゼは、516種類がヒトゲノム上にコードされ、ヒトゲノム上の2%以上を占める大きなファミリーを形成している。リン酸化シグナルネットワークの整理は生命現象の解明に重要な役割を持つ。膨大なリン酸化サイト情報を整理するため、まずリン酸化サイトのデータベース(Phosphosite Plus)のデータセットを用い周辺配列をMCLクラスタリングすることで、178のリン酸化モチーフを決定した。次にリン酸化モチーフの生理的重要性を調べるため、リン酸化モチーフは、KEGGのorthologueグループを利用し、リン酸化サイトの比較進化解析を、ヒト、チンパンジー、マウス、イヌ、ゼブラフィシュ、ショウジョウバエ、線虫、分裂酵母、出芽酵母の9種類の種に対して行った。その結果、特定の種から保存性が急増する16モチーフを発見した。線虫から保存性が増加するモチーフは、キナーゼドメインおよび、キナーゼ調節領域に集中していた。またショウジョウバエから増加するモチーフは転写調節をになるZincfingerドメインおよび、近傍の配列であった。ゼブラフィッシュから増加するモチーフは、スプライシング、細胞骨格およびインスリンシグナル経路の関連因子に有意に存在することが分かった。またそれらのモチーフのネットワーク解析を行ったところ、酵母まで保存されている生命のコアシグナルに対し直接相互作用する分子に有意に存在することが分かった。この結果は特定種から増加するモチーフを解析することで、進化的に付加された調節回路を同定できることを示唆した。
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